We Get Requests -Remaster Digi Pack プリーズ リクエスト 試聴あり


「粋」をジャズで表現すればこうなる、という見本のようなアルバム。64年リリース。


丁々発止のアドリブのぶつかり合いは一切なし。ミュージシャンが、俺が俺がと腕を見せたがるインプロビゼイションも一切なし。小技の繰り返し。シンプルネスの妙。オスカー・ピーターソンが長年の経歴で蓄積した「アンコール用の楽曲」を、こうまでも流麗に、小粋に披露されると聴き手のテンションは自然と高まる。気軽にジャズの面白さを楽しめる好盤である。眉間にしわを作る必要は全くなし。


オスカーオスカーなりに、音と格闘して来たに違いない。超絶技巧を駆使するピアニストとしてその名を馳せた男だ。その目的は何だ。矢張り、音にうるさい人々のハートをゲットするためだろう。自己満足ではプロの名が廃るのは自明の理。マイクの向こうの聴き手を意識せずして何を得よう。技巧に走るのにもそれなりの理由があろう。


それが、ここにきて、このシンプルさだ。どうよ。彼の技巧を期待した面々は肩透かしを食らった。技巧云々よりも、聴き手にとってのわかりやすさを追求した音を選び取った結果がこのアルバムである。


「コルコヴァード」「酒とバラの日々」「イパネマの娘」など、ジャズの定番がズラリ。特に、私のジャズ人生の始まりのきっかけを作ってくれた「イパネマの娘」に特段の思い入れを持つ私にとっても、このアルバムは一種特別。おまけに、スティングも歌った「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァー・ミー」も、3曲目に挿入されているし。これは相変わらず名曲だな。品位と切なさ。名曲の条件はこれだ。


オスカー・ピーターソンといえばこのアルバム、というのが定説だと思うが、本人はどう思っているのかな。でも、ちょっと肩の力を抜いたほうが、永遠に語り継がれる仕事になり得る可能性が高いのかも、というのが率直な感想である。