人を鬱病から遠ざける気質って何だろう?


会社の研修で、ベテランの女性専門医が述べた。「そのひとつは、親密性です」。安らぎや幸福感を得られるような継続的な人間関係、それが親密性である。


今回のレディオヘッドの態度、つまり「it's up to you」(いくらで買うかはあなた次第ですよ)というメッセージは、ほかならぬ、我々個人個人に向けた、安らぎを覚える親愛の情だと受け取れる。「好きなように、いかようにもしてくださいな」。判断は我々にゆだねられた訳である。


自由で、伸びやかで、持続的な人間関係において不可欠な要素として、「相手を自由にしておく」ということが挙げられると思う。かつて、スティングは歌った。「もし誰かを愛したのなら、その人を自由にしておきなさい」。その前は、「お前を愛している。ずっとその一挙手一投足を見つめていたい」なんて言ってたのに。


レディオヘッドは我々を自由にしてくれた。人間の原罪とか、サラリーマンの「糞食らえ度合い」とか、成功者の「欺瞞」とかは指摘しないようになった。人間の幸福も不幸も、結局は個人それぞれが自ずから、自己の責任で受け入れて、その人なりに決定するものなんだよ、と優しく、そして毅然と言っているような気がする。「it's up to you」ですよ、とどのつまりは。


トム・トークは、ここ数年で最高のソングライティングを披露していると思う。「15step」とか、リズム面でも相当の工夫が見られるし、飽きさせないための努力のあとがそこはかとなく見受けられる。


極めて繊細なトム・ヨークが精神の均衡を保つためにも、そして世界中の多くのファンに平和をもたらすためにも、レディオヘッドは聴き手に自由を与えることが必要だったんだ。何事にも縛られたらおしまいだ。すべてついえちゃう。独特の嗅覚で、彼らはファンを、そして自分たちをも自由にした、そんな気がする。とにかく、長年のファンを唸らせ、うるさ型のロックファンの耳を満足させるだけの高レベルの楽曲群を提供してくれたレディオヘッドには改めて脱帽だ。ホント、上手やな、君たち。