ビートルズが殆どの曲を録音したスタジオがアビー・ロード・スタジオだが、そこのスタッフは日頃から「ビートルズの録音は、ゴミでも絶対に捨てるな」と命令されていたらしい。命令主はプロデューサーのジョージ・マーティン。そして、彼と、その息子ジャイルズが、このアルバムを生み出した。膨大な音源を丹念に聴き直し、あたかも「ビートルズの新作」というような雰囲気が漂う楽曲群を紡ぎ出した。存命中のポールとリンゴの承諾があったことは言うまでもない。
昨年末にリリースされて、やっと聴いた感あり。素直に「良かった」と言いたい。「4人に対する冒涜だ」とか「単なるコケオドシだ」とか巷のビートルズ・ファンは何かとかまびすしいが、このアルバムは一種の「企画もの」であり、ビートルズの魅力を人一倍知り尽くし、彼等に対する深い愛情を持つジョージ・マーティンとその息子による「有り難いギフト」だと理解したい。
私は学生時代に、バイトの先輩からビートルズの「全てのLP」(先輩談)を譲り受け、その日以来ビートルズの計り知れない魅力にKOされまくっている男だ。昔有線放送が聴くことのできるマンションに住んでいたことがあるが、「ビートルズ・チャンネル」なるものばかり聴いていた。川島何某の血はワインでできているのなら、私の血はビートルズでできているのだ。ある種、私にとって空気のような、当たり前のような、今更このブログで紹介するまでもない、そんな存在なのだ。いや、偉大過ぎて、紹介するのは憚れるといった方が良いかな。「今更」というのは、「音楽の神様たち」の作品をおいそれと斬り難い、という自分の力量の無さに対する言い訳かもしれない。
今回のアルバムは「企画もの」だということで、気楽に書きたい、ところだ。「ゲット・バック」と「ア・ハード・デイズ・ナイト」が重なっていたり、「ヒア・カムズ・ザ・サン」の後ろで「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」のタブラが鳴っていたり。「エリナー・リグビー」に「ジュリア」が繋がり、「カム・トゥゲザー」に「ディア・プルーデンス」が被さる。なんでも120曲以上のビートルズ・ナンバーの断片が収録されているらしく、それらを探し当てていく作業だけでも十分楽しめるのではなかろうか。
こうして並べられると、「ゲット・バック」「グラス・ユニオン」「アイ・アム・ザ・ウォルラス」「ドライヴ・マイ・カー」「カム・トゥゲザー」・・・と、改めてオリジナル楽曲の素晴らしさを再発見すること枚挙にいとまなし。例えば、歓声の中から「ドライヴ・マイ・カー」が流れてきた瞬間なんて、極上のグルーヴに鳥肌が立つものね。アコースティック・バージョンの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」も新鮮で面白い。
ビートルズの凄いところは、その音楽が放つマジックがいつのいつまでも色褪せないことだ。これは本当に驚嘆に値する事実であり、私が未来永劫彼等の虜となっているに違いないと断言できる根拠なのである。