先日とある喫茶店でサービスランチを注文した。「オムライス・ランチ」で700円。薄利多売の典型で、お店は混雑していた。前に一度来たことがあるのだが、とにかく出てくるメニューが半端でない。①サラダ②オムライス③冷奴④味噌汁⑤スイカ⑥コーヒー、以上でズバリ700円なのだ。お得感抜群なのだが、今日言いたいのは店員のお粗末さ。まるでコント。


今日は女性3人で切り盛りだな、前は確かマスターがいたっけ、それにしてもこのお店の混雑は何事だ、と不吉な予感がよぎるものの、とりあえずサービスランチを注文してカウンターに座る。本棚から週刊誌を取ってきて、しばらくするとサラダが出てきた。ここまでは良かった。


次はオムライス。あれ待てよ、サラダは箸で食べるのは分かる。オムライスに肝心なものが付いてないじゃないか。そう、スプーンだよ。辺りを見まわす。もしかしたら、「うちは和風オムライスですので」とか言ってスプーンは邪道じゃ、みたいな路線の店かもしれないし。ところが、後ろのテーブルでOL2人組がスプーンでオムライスをほおばっているではないか。


「すいません、スプーンくれます?」と私が言うと、年増の女性がカウンターの中から「あ、行ってなかった?」といそいそと手渡してくれた。隣に座っていた水商売風の中年女性が笑いながら一言。「何でも主張していかんとあかんねえ」。


③の冷奴と④の味噌汁はスムーズに出てきた。私も気を取り直して週刊誌の「小泉首相の通信簿」みたいな記事を読みながら箸を進めていた。そして、出てきたものを完食してしばらくのインターバル。まあ、店員も忙しそうだし、⑤のスイカはちょっと待ってあげるか、と仏の心を我が身体に注入する。いい大人が「スイカまだあ?」なんて子どもじみたセリフ吐くのはちと恥ずかしいじゃん。


でも、時計が12時45分を指したとき、さすがの私も堪忍袋の緒が切れて、「スイカマダデスカ?」とまだ比較的ジェントリーに言い放った。隣の水商売風女性は私の目付きに多少の鬼気を感じ取ったのか、無言のまま目を伏せていた。


週刊誌も最後の方のページに辿り着いた。スイカも食べたよ。ふとカウンターを見たら女性3人達はうまそうにタバコをふかしていた。客の入りも一息ついた。だって12時50分回ってるもの。切れそうなのを必死に押さえて、「コーヒーマダ?」と私。さすがに敬語は出なかった。店員の一人が別に悪びれる素振りもなくホットコーヒーを作り出した。


もういいよ、とコーヒーを一口だけ飲んでレジに1000円札を置く。そしたら店員はお釣りの300円を私の左手の30センチ上方からパラパラとお落としになった。アンビリーバボー!読者様の憐憫を誘うような決定打にわなわなと打ちひしがれながら、罪深き喫茶店を出て行こうとしたら、店の床の段差に激しくつまづいて、思わず本棚に顔を打ち付けるところだった。その激しさたるや、まるでコント。憤りと恥ずかしさで顔が紅潮してきた。


帰り際にお店の看板を見たら、「当店のオムライスには、透明人間になれる薬が混入されております」という文章があった。④の味噌汁が出てきた時ぐらいから薬が効いてきたか!ガッデム!