2012年5月と7月に相模原市で主催された、放射能に関する講演会の内容比較です。

こどもまもりたい のお母さんが、二つの講演会に行かれて、講演会の内容を比較したものをレポートしてくださいました。

なお、同じレポートが「こどもまもりたい」HPにも掲載されています。そちらは、比較表になってとても見やすいので、ぜひその比較表をご覧頂ければと思います。

http://members3.jcom.home.ne.jp/5539mpym/ こどもまもりたい ホームページ

とりあえず、比較したものを挙げておきます。


                                            講演者 比較内容
 山内 正剛(まさたけ)氏  相模原市地域保健課主催 放射能の健康影響に関する講演会
                         
菅谷(すげのや)昭 氏 相模原地域大学 公開講座講演
チェルノブイリ原発事故から日本は何を学ぶべきか
現地医療支援を踏まえて医師としての立場から。

参加費
 山内氏講演会  無料
 菅谷氏講演会  大人・中学生ともに500円。


講演の概要
山内氏 広島・長崎の原爆後の追跡調査結果を基に、「福島から出た放射性物質は科学的に安全」と説明。

菅谷氏 「自分の経験をもとに、チェルノブイリ事故後26年間に起こった健康被害の、事実だけを話すので、それぞれで判断してほしい。」


講演資料
山内氏講演 資料なし。講師の略歴が記された用紙1枚。ビデオ撮影・録音は禁止というアナウンスが入った。

菅谷氏講演 講演要旨と、使用スライドを印刷した資料を配布。メモを取りやすく、あとで内容を振り返り、他の人に伝えることもできる。



スライド映写について

山内氏 講演
 多数のスライドを、ものすごいスピードで映写。原爆のデータ等、表やグラフは多くが英語で書かれていて、縦軸・横軸の説明もなく、早口で説明。(学会発表でも、これほど速く話さない。多くの人が、内容を理解できなかったことだろう。根拠を示した「ふり」と感じた。)
 原爆による熱傷で、皮膚のただれた人たちの映像。(「福島ではこれほどのことは起こっていない」ことを表したかったのか?)

菅谷氏講演
 23枚のスライドをゆっくり映写しながら、詳しく説明。原発事故はコミュニティを破壊し、家族を引き裂き、差別を生む。豊かな田園風景だったはずの景色や、壊された村、検査の意味もわからず連れてこられた可愛らしい子どもたちの映像は胸に迫るものがあった。
 グラフや分布図など、数値の出てくるものはゆっくり、じっくりと説明された。


放出された放射性物質の量
山内氏講演
 チェルノブイリ事故では、福島の10倍放出。
 福島は、原爆と比べてどのぐらいなのかは説明なし。(原爆の追跡調査の結果を出して、安全を強調するのなら、原爆vs福島の量比較を最初に説明してほしい。話の印象や衝撃的な映像では、原爆のほうが量が多いとと感じるが、実際は逆。)

菅谷氏講演
 チェルノブイリ事故の放出量は広島原発の600倍。福島はチェルノブイリの7分の1。つまり、福島は、原爆の86倍。
 
 

汚染のレベル

山内氏講演
 チェルノブイリから日本に飛んできた放射性物質は、核実験により外国から飛んできた量に比べたら微々たるものというグラフを提示。(メモによると核実験でとんできたセシウムのピークは60~70年代で、6000ベクレルだった。)
 福島のデータは「まだ見ていませんが、大したことはないでしょう」と最も大切な数値を表示せず。
 福島から出た量は示さないまま、過去の核実験・医療被爆・自然放射線等で放射能がもとより周囲にあって、「そこで生活して具合が悪くなった人はいないから、安全」と説明。


菅谷氏講演
 現在の福島と、事故10年後のベラルーシのセシウム汚染地図を比較。中心(原発周辺部)は福島がチェルノの2倍。福島原発から半径100kmとチェルノ原発から200km圏内(講演者が勤務した病院がある)が同程度の汚染。
 原発中心部は、
 チェルノブイリ原発:1500キロベクレル以上
 福島原発:  3000キロベクレル
 原発からの半径
  チェルノブイリ200km:50~200キロベクレル
     福島100km:  60~400キロベクレル 
 「政府はこういうデータを出すべきだ。」


健康被害
 
山内氏講演
原爆のデータから100mSV以上で0.5%がガンになる。(1回の外部被爆)。
それ以下は「データがないからわからない」。また、原爆二世に影響は出なかった。
チェルノブイリの影響で甲状腺ガンが出たが、予後の良いガンで、人は死んでいない。
白血病が増えた、DNAの変異が見つかったという報告もあるが、本当かどうかわからない。先天性異常の増加は母親の高齢化のせい。福島で母乳にヨウ素が出たが、赤ちゃんに影響はないだろう。  
 もし健康被害があれば、巷にあふれる化学物質のせい、またはそれらとの相乗効果だろう、しかし今のところそのような報告はない。
 具合が悪いのは精神的なものだ。放射能のせいで、毛が抜けたり吐いたり、下痢が止まらないとしたら、もう1週間しか生きられないし、そんなことはありえない。 
 講演者が手術した子どもたちの映像。

菅谷氏講演
 子どもの甲状腺がんが、チェルノブイリ事故4年後に急増し、10年後にピークとなったグラフを紹介。
 被爆した子どもたちは年2回の検査、採血・ホールボディ・X線、メンタルケアも必要。
 低線量(年間100mSV以下)被爆地域の、健康被害を紹介。26年後の現在、免疫機能低下・造血器障害等の健康被害が起こっている。周産期異常は、この10年増えている。



汚染地域で暮らせるか

矢内氏講演
 福島ぐらいの放出量では、科学的に大丈夫、心配ない、ご飯に入った虫のようなもの。核実験時代には、1000~1万ベクレルのしいたけを食べたが、具合の悪くなった人はいない。
 核実験で放射性物質が世界を巡っても、宇宙飛行士が1日1mSV浴びても、放射能のバックグラウンドの高い国でも、具合の悪くなった人はいない。
 いろいろな核種が出ているが、微量だから大丈夫。プルトニウムも大丈夫。
 「南相馬でも暮らせます。」

菅谷氏講演
 「低濃度汚染地域の子供たちには、おそらく、将来、なんらかの影響が出るだろう。」




放射性物質の蓄積

山内氏講演
 「セシウムは生物濃縮されません。」

菅谷氏講演
 ある計算では、250~500ベクレルの食品を毎日食べたら、年間0.8mSVの(内部)被爆になるそうだ。
 子どもの体でセシウムは、1ヶ月に半分排出され、残りが徐々に蓄積される。



被爆を防ぐことについて

山内氏講演
 自分で測ることが安心につながっているようだ。科学的に安心なのに、心配する人を説得するのは難しい。放射能測定は、「安心安全ビジネス」。 

菅谷氏講演
 国をあてにせず、自己管理によって放射線被爆(外部被爆・内部被爆)を防ぐこと。放射性物質は、食べ物や呼吸だけでなく皮膚・粘膜・傷口からも血液に入る。不必要な被爆は避ける。



今後のこと

山内氏講演
 今日のさわぎは、マスコミのせい。おどかすようなことを言う先生もいるが、「1年経ってみて、どうです、何もおこらないでしょう。この心配・不安はだんだん解消されていくでしょう。」

菅谷氏講演
 汚染地で暮らすのなら、食べ物に気を付けて、検査を定期的に受け、ときどき保養をすること。
 被爆に十分気をつけて過ごしてきたと自負するベラルーシの女医さんでも、ホールボディーで高い値が出た。



講演を聞いた後の感想(こどもまもりたい レポートを作成された方の感想)

 まず、山内氏の講演について。
100mSV以下の被爆のデータはないと言ったのに、根拠は示されないまま、「科学的に安全」を繰り返された。放射能の影響が疑われる事例はすべて、化学物質など他の要因によるもので、決して放射能のせいではない。よくわからないけれど、安全・・・なのかなあ?という薄い印象を残す。放射能対策を馬鹿にしたような言動に腹が立った。

 何があっても、放射能のせいではない。他にたくさんの要因があるから、決して放射能との因果関係を証明できない。もしかして、加害者側にとっての「安心・安全」ですか?

 講演では、山内氏はこう発言されていました。
「こんなに科学的根拠があって安全なのに、ICRPが何か言ってくるのは、日本の原発推進を邪魔したいんじゃないかと。あっこれナイショですよ。他の場所で言わないでください。

「国から怒られますから。」このような言い方までして、「安全」をあおりたいのでしょうか。

 ベラルーシの病院で実際に医療活動にあたり、チェルノブイリ事故の影響を目の当たりにした医師の話には重みがあった。
 少なくとも福島は、チェルノブイリなみに汚染された。
 その周辺部も、距離や地理的条件に応じて汚染されているはずだ。実際に、放射性物質は神奈川県や静岡県の農作物まで汚染した。チェルノブイリ後26年間に現れた健康被害は、今後日本でも必ず顕在化するだろう。
 そのように想像して、今後、不必要な被爆をできるだけ避けるよう、長期に渡って自己管理しなければならない。また、今回のような話を子供たちにも伝えて、自己判断で身を守れるよう教育する必要がある。
 もし放射性物質の影響で健康被害が出たとしても、誰も補償してはくれない。

 このような講演を企画してくださった、相模原市に感謝の意を表します。有料でも、積極的に参加いたします。