ラジオMy Room Jazz 収録しました
今度ご紹介するアルバムは
今年２月に惜しくも亡くなられた
辛島文雄さんのピアノソロアルバム
「Everything I Love」
2014年の録音
私が自宅でよく聴くピアノアルバムの中の一枚でもあります。
いつも素晴らしい辛島さんですが、
この録音はまたさらに
神がかっているかのよう。
ただのファンでもある私の辛島さんへの思い出は
共演者の方々に比べたら本当に少なく
私などがそれを語るなんていうのは烏滸がましいとも思っていたのですが
改めてアルバムを聴いていて
辛島さんのピアノをまだご存知でない方に
少しでも知ってもらえたらという気持ちになりました。
なので今日は少しだけ書かせてもらおうかなと、、、
（ここまででも長いですが 笑
ちょっといつもより長めです）
数年前のこと
熊本で辛島さんと山下洋輔さんの2台ピアノのコンサートが開催されると聞き
飛行機をすぐに予約しました。
今でこそ頻繁に九州へは仕事で行かせてもらってますが、
そのときはまだそれほど縁もなかった私。
その日のそのコンサートのためだけに飛行機チケットを買いました。
東京でだって聴けない組み合わせ。
いえ、もしかしたら二度と、
それがどこでだろうと、
そうは聴けない演奏です。
出向いて正解でした。
凄まじさと美しさ
お二人の演奏に圧倒されました。
演奏の最後の方では
辛島トリオの才能溢れる若手のベースとドラムも入っての
全員でのセッションも素晴らしかった。
とにかく大満足なライブでした。
演奏後の打ち上げにも参加させていただき、
真横に山下洋輔さんがいらっしゃって
緊張しながらもお話させてもらっていたとき
ベーシストが急に席を立って何処かへ行こうとしていました。
何やら同席していたファンの方に何か言われたらしいのですが
明らかに酔っていたその方の言葉が失礼だったんだろうなと思います。
それに気づいた辛島さんがすかさず
「あなたはあなたの勤め先のその小さな世界では一番偉いのかもしれないが
外に出れば偉くもなんともない！その偏った常識であの素晴らしい音楽家に
とやかく言うのは失礼だ！いますぐ走って彼を追いかけ、謝ってこい！！」
（言葉のどこかは違ってるかもしれないですが
こんな方向のことをピシャリと仰ってました。）
一瞬打ち上げの席が凍りつきましたが
それよりも何よりも
なんと言うか
そのまっすぐな発言に私は感動してしまい
しばらくその言葉の波動が持つ余韻で
身動きがとれなくなったという感覚でした。
みんなが固まったあとの
山下洋輔さんのひとこと、
「うむ。正しいミュージシャンの飲み会だ」
これにも心掴まれました。
この出来事を含む全てを通しての2台ピアノ、
2人の巨匠の共演を間近で聴けた喜びでその日は満たされました。
それから数年経ち、たまたまそのときのベーシストさんと共演できることになり
この一連の話もできました。
もちろん彼は自分が席を立ったあとの出来事なので、
辛島さんがこんなことを言っていたなんてことを知らず、
「そうでしたか、、」
としばらく俯かれていました。
何かを考えていらっしゃるようでした。
あまり触れない方がいいのかなと、
そのままに気持ちだけを寄り添いながら
私としては
伝えられて良かったと、
何か一つ、
役割を果たせたというような気持ちでした。
私も歌い手として
リーダーの立場になることが多いわけですが
同じようなシチュエーションでメンバーの名誉をこんな風に守れるだろうかと
たまにこの日のことを思い出すことがあります。
逆にお客様に失礼なミュージシャンを叱ったことはありますが 笑
辛島さんとは直接はたくさんお話できなかったけれど、
（人見知りな上に、余計憧れの人には緊張して上手に話せないんですよね〜
そこ、誰ですか？笑ってる人 (笑)
疑われるけど、ほんとですよ！）
熊本の演奏の前にも
BODY&SOULでの辛島さんのリーダーライブを聴きにいったこともありました。
潔いその音楽に、こんな風に歌いたいと
いつも憧れていました。
技術と心がしっかりとお互いを支えあい、
両方のパワーで芸術を産み出し、
聴くものの心へ届く
それが出来てこそのパフォーマンスであって
それを高めるために死ぬまで演奏し続けるのがミュージシャンだと思っています。
こんな些細な出来事から垣間見た辛島さんは
物事から逃げない、
心としっかりと繋がれていた人なんだろうなと
思いました。
圧倒的なのは技術だけではないんだと。
もっともっと辛島さんの生の演奏を聴きたかったけれど
いまは残されたアルバムをその隅々まで聴き続けようと思います。
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