見ようとすると観えない。

聞こうとすると聴こえない。

不思議なものだが、私たちの感覚は、力を込めれば込めるほど、かえって本質から遠ざかってしまうことがある。

たとえば、美しい夕日を「きれいに撮ろう」と画面越しに覗き込んだ瞬間、風の匂いや光のグラデーションのゆらぎは、指の間からこぼれ落ちていく。

「幸せにならなきゃ」と誰かの正解を必死に追い求めるほど、足元にある自分だけの心地よさは、霧の中に隠れてしまう。

大切なのは、網を張って獲物を捕らえようとする鋭さではなく、ただそこにあるものを「受け入れる」ための余白だ。

目を凝らすのをやめて、耳を澄ますのを忘れたとき。ふとした瞬間に、世界はありのままの姿で語りかけてくる。

五感からノイズを払い、意識を今に置く。

答えを探すのをやめたとき、はじめて届く「安心感」がある。

今日も、少しだけ視線の力を抜いて、流れる時間をそのままに味わってみたい。