哀愁の清涼里(チョンニャンニ) (4)
だいたい200メートル四方くらいの区画に、びっしりと置屋が並んでいる。
建物はほとんどバラックに近い。ショーウインドーのようなガラス張りの向こうで、女性たちが並んでいるのである。
言うまでもなく、韓国でも売春行為は違法行為である。しかし本音とタテマエが併存するのがこの世の常。
韓国社会の中で、この “文化” は連綿と生き続けてきたのである。
しかし、かつては隆盛を誇った588だが、この地区を管轄する警察に女性署長が誕生してから、取り締まりが強化された。徹底的な摘発を受け、現在は営業している店は4~5軒に1軒程度となってしまった。
社会が成熟し、街が再開発されるのに合わせ、この街も近い将来には姿を消してしまうだろう。
だからこの街がなくなってしまう前に、一度悪友くんにも見せておきたかったのだ。
通りを歩いて行くと、中の女性が一斉にこちらに呼びかけてくる。
「オッパー、寄ってって~」
こちらの注意をひくために、ガラス戸をガン、ガン、ガン、とたたく。
みんな一斉に、である。
気の弱い悪友君は、その音に威圧されてしまう。ちょうど地震の時、揺れよりも家具が立てる音にビビるようなものだ。
女性たちは総じて、モデル並みのスタイルで顔もきれいだ。
しかし悪友くん、そんなもの見ている余裕がない。
ガン、ガン、ガン・・・・ガン、ガン、ガン・・・・
僕などは何人か悪友くん好みの女の子を見つけたのだが、悪友くん、まったくそんな余裕がなく、置屋街を一周してしまった。
あらあら、このまま逃げ帰ってしまうのか、悪友?
寒空の下、女性たちのガラス戸をたたく音だけがこだましていた。