ヒロがいつだったか嬉しそうに言った。

「おっとーの貯金箱がもうすぐ一杯になるからなったら3人で温泉行くんだって」って。

そして一杯になった時、ヒロは病魔に犯され、そのお金はその時必要なことに使うことになった。

一回目に一杯になった時、ヒロパパの父が亡くなり、子供達を連れての帰省費用になり

二度目に一杯になった時、ヒロが亡くなった。

ヒロパパはもう一杯にできないから、なる前にどこか行こうと言い

京都のお寺廻り旅行になった。

普段、人にヒロの話しをしないヒロパパなので、たくさん話しをした。泣いていた。

今まで、旅行はした事がなかった。ヒロパパの田舎が熊本だから、旅行するなら熊本だったし。

3人が一番行きたかった場所は千体観音のある三十三間堂。

千体の観音様の中に亡くなった会いたい人にそっくりの観音様に必ず会えるという。

ヒロを探した。後ろの方は見にくい。探しながら歩いていると

なんだか一体だけ光りを放つお顔の、しかも後ろなのに顔がちゃんと見える観音様が

棺で眠っていたヒロの顔にそっくりだった。気のせいかもしれない。でも私はヒロと思えた。

どうか、あちらの世界で、守っていただき、幸せでありますように…

ただ、ただ、祈った