今回はクリスティーナ・アギレラの4年ぶりのアルバム「Back to Basics」の紹介です。
彼女にとって3rdアルバムとなる今作は、タイトルにもあるように「音楽の原点に立ち返る」
「自分自身の原点に立ち返る」という意味が込められた作品になっています。ポップ・アーティストの
オリジナルアルバムでは結構珍しいのではないかと思うんですが、2枚組の大作です。
音楽の原点という意味では、彼女が幼少の頃から、祖母や母親の影響で
聴いていたという1920・30・40年代の時代のブルース、ソウル、ジャズといったまさしく
古きよき時代の音楽がベースになっていて、サンプリングも多用されています。
ただ単にそれをコピーするのではなく、いまのR&B、Hip-Hopの感覚をブレンドして
作り上げた力作になってます。彼女が好きな音楽というだけあって、歌への愛がすごく伝わる
アルバムです。
そして自分自身の原点という意味では、彼女が結婚したことも関係しているかもしれません。
幼い頃から家庭環境等で辛い思いをした彼女がようやく得た幸せによって、久しぶりに満たされた気持ちに
なれたという「心の平穏」を感じます。落ち着いてじっくりと好きな音楽と向き合う精神状況になっているのでは
ないでしょうか。
Disc1は、まさしくこのアルバムのコンセプトである「音楽の原点回帰」をテーマにした「Intro(Back to Basics)」から
スタート。自分が愛した昔の時代の音楽とミュージシャンたちへの敬愛の気持ちを歌っています。昔の時代の
素晴らしい音楽があったからこそ、自分が音楽の道を進むことになったということが歌われています。
続く「Makes Me Wanna Pray」はパワフルなピアノとボーカル、そしてゴスペル風のコーラスが印象的な
ソウルナンバー。
「Back In The Day」はイントロのレコードに針を落とす音のSEや、Hip-Hop風のスクラッチ音なんかも
インサートされたナンバー。この歌でもマーヴィン・ゲイやアレサ・フランクリン、エタ・ジェイムスなど
彼女が影響を受けたアーティストへのリスペクトを歌っています。
続く「Ain't No Other Man」は大ヒット中の先行シングル。ファンキーなナンバーですが、これは
DJ Premierがプロデュースを担当。ジャズとHip-Hopをミックスしたようなタイトなビート感がクセになります。
DJ Premierはいわゆるポップ畑のアーティストとのコラボはこれが初めてらしいのですが、とても息が合ってます。
「Understand」は力強い歌声のメインボーカルと、バックで展開するウィスパーを駆使した切ないボーカルの
2つの声に魅力を楽しめるソウルナンバー。
「Slow Down Baby」は「あんたのことなんて別に好きじゃないし他に彼もいるんだから、つきまとわないで」という
身も蓋もない内容の詞が印象的な曲。
続く「Oh Mother」はちょっと感動的な歌ですね。切ないピアノからはじまるバラードなんですが、彼女が
幼い頃、母親が父親から暴力を受けていたことを歌った歌。悲しい過去を乗り越えて、今アギレラは
自分自身の成長を支えてくれた母親への感謝と、これからは自分自身が母親を守ることを
歌っています。
「F.U.S.S.」はキラキラしたピアノのイントロから一転、深く重たいメロディーで進行するR&Bチューン。
ただ、詞はScott Storchに対して、なんか複雑な思いを歌った?意味深長な内容になっています。
「Without You」は、若干明るめで穏やかな雰囲気のナンバー。大切な恋人への感謝を歌った
詞になっていて、彼女のボーカルも優しさに満ちた感じです。
「Stil Dirrty」はDisc1で一番好きですね。サックスの音色と、随所に登場する彼女の「Sexy~」という
ボーカルがとてもクールでかっこいい。前作「Stripped」に収録の「Dirrty」の攻撃的なサウンドとは全然
違うサウンドになってます。
Disc1ラストの「Thank You(Dedication To Fans...)」はタイトルどおり、自分を信じて応援してくれる人たちへの
感謝の気持ちを歌った歌。この曲では彼女のデビュー曲「Genie In A Botttle」、「Can't Hold Us Down」などが
サンプリングされてます。
そしてDisc2は全編を通してリンダ・ペリーと共同で楽曲を制作。
1曲目の「Enter The Circus」はタイトルどおりサーカスの始まりで流れていそうな、不思議で、かつ
何が始まるかわからないような奇妙さも含んだインスト曲でスタート。
続く「Welcome」は人生の中の光と影を歌ったようなナンバー。
いつまでもいいときが続くとは限らない、ということを冷静に歌ってます。
一転して「Candyman」はスウィング・ジャズ風の楽しいナンバー。
「Nasty Naughty Boy」はイントロの「Come here,big boy」というセリフや、「あぁぁぁん
」 という吐息もなんだか
とてもやらしい感じのナンバー。ホーンセクションの奏でるサウンドもエロさを倍増してます。
続く「I Got Trouble」も面白いナンバーで、自分のことを手に負えないトラブル・メイカーと歌っていて、
ただ、そんな自分の性格を肯定して、周りの人を振りまわされるのを楽しんでるような
悪女っぷりをのんびりしたかわいいサウンドで歌ってます。
「Hurt」はもの悲しいピアノからはじまるバラード。恋を失った悲しみから立ち直れずにいる女性の、未練を歌った
もので、アルバムでは唯一といっていいほどオーソドックスなサウンドで、ストリングスの音色が
とても綺麗です。
「Mercy On Me」はあらゆる場面で、罪深き人生を歩んできた歌のヒロインが、後悔して
神に許しを請うという内容のソウルナンバー。
「Save Me From Myself」はアコースティック・ギターを中心とした軽めのサウンドにのせて、
つぶやくように歌うボーカルが印象的。恋人の存在によって、自分自身も強く生きていけるということを
歌ったナンバー。
ラストの「The Right Man」もいい歌ですね。ストリングスの厳粛な感じのするサウンドをバックに、
彼女自身が得た幸せ「結婚」を歌ったナンバー。幼少時代、必ずしも幸福な環境にいたわけでは
なかったらしい彼女がようやく見つけた心の平和を噛み締める様にうたうボーカルが印象的です。
…というわけで2枚組、全22曲の作品ですが、感想は非常にいいアルバムだったということです。
最初は2枚組ということで「聴くの大変だな」と思ったのですが、Disc1は様々なオールドミュージックを
楽しむ内容、Disc2は軸足はそこに置きつつも、もう少し「聴かせる」要素も含んだ内容になっていて
テイストが別れていたので、2枚組になっている意味も理解できました。
ただ、まぁディスクを取り替えないといけない手間だけ考えれば、一枚モノのアルバムのほうがいいんですけどね
。
もともと歌はうまい人ですが、いろいろな表現方法を身につけたことによって
歌の幅が広がったし、なによりサウンドコンセプトがしっかりしていて、ぶれていないので、
今回やりたかった世界というのがとてもわかりやすく表れていて、しかもクオリティもハイレベルな
アルバムになってます。頭もとてもいい人なんでしょうね。まさに才色兼備。
デビュー当時はアイドル路線だったのに、どんどんと自分のやりたい音楽の幅を広げて進んでいける彼女。
今後も全く違う表情を見せてくれそうで楽しみです。
- Christina Aguilera
- Back to Basics