空を塗る
青い空に白いペンキをぶちまけたら
その日は雨が降った
お母さんが
「洗濯物が乾かないと困る」と言うので
七色のペンキで虹を描いた
それでもやっぱり雨が降った
ケンの話に、いつの間にかその場にいた全員が聞き入っていた。
特に男性陣は、その場で話を聞いていた全員が童貞である。
どうしても、自分の姿をその先輩に重ね合わせてしまう。
たぶん、童貞一同は皆一様にキラキラした初体験を思い描いているはずだ。しかし、22歳にもなると、そのキラキラした想像が徐々に焦りへと変わってくる。
実際、俺がそうだ。
理想は理想として、生涯を共にする女性としか関係を持ちたくないという、このご時世では信じられないようなキラキラした理想があるのだが、
「22歳がこんなのでいいのか?」
という思いも間違いなくある。
ただ、風俗へ行く気にはならなかった。
これは風俗に対して偏見がある訳ではなく、お金を払ってそのような行為をしたくなかったのだ。
沈黙を破ったのは、ケンが連れてきた女・・・里美であった。
「三原くんは童貞を捨てたいと思わないの?」
いきなりとんでもないド直球の質問だ。
「捨てたいと思ってますよ。ただ、僕は結婚する女性とでしかそんなことをする気はないですから」
俺も俺で、その質問にド直球で返す。
「へぇ~、そんな人今時いるんだぁ~」
確かにこの時代で、そんな貞操観念を持っている男は少ないのかも知れない。俺の周りにいる野郎連中は童貞も非童貞も含め、そこは誰も理解出来ないらしい。
だが、俺はそれでいい。
俺はミシン針でいい。
同じ穴をつつき続けるだけでの生涯で良いと思っている。
「面倒臭い童貞なんですよ」
俺は客観的に観た自分の姿をそのまま言葉にした。
するとそこで、里美が意外な言葉を口にしてきたのである。
「でもあたしは、そういう人好きだけどな!」
待て待て。
何を言っている。
そんな訳ないじゃないか。
だいたい、・・・これは確認した訳じゃないからただの偏見だが、話の内容や態度から察するに、君は処女ではないだろう?
処女を失っている人間に、「そういう人か好き」と言われてもまったく説得力がない。
「またまた、ご冗談を」
しかし、俺が言ったその言葉にも、
「かっこいいと思うよ。三原くんのこと」
そんな言葉を返してきた。
「はっはっは!だいぶ酔ってるみたいですね!」
別に悪い気はしていない。
むしろ、「好き」だの「かっこいい」だのと言葉が出てきたら、どちらかと言うと良い気分だ。
ただ、直ぐ目の前にいる年頃の女性が発するそんな言葉をどうにか出来るほど、22歳の童貞男子は器用じゃない。
俺は強引に話題を変え、また宴の続きに戻したのであった。
ふと時計を見ると、もう少しで日付が変わる時間となっている。
「悪いけど、俺明日バイトで早いから先に寝るわ」
俺は大学二年生の時からお台場の大江戸温泉物語で土日だけバイトをしているのだが、明日がちょうどその日であったのだ。
「なんだよ!付き合い悪いな!」
中山がかなり赤くなった顔で言う。
「まったく、真面目だねぇ」
堤の老け顔が、酔ってさらに老けている。
「お子ちゃまは早く寝た方がいいよ!」
もはや半分も開いていない目をしたケンが言った。
そして、その横で、
「どこで寝るの?」
里美が聞く。
「ああ、僕の部屋はまた別にあるんですよ。玄関の直ぐ隣の部屋が僕の部屋なんです」
俺は自分の部屋が別に有ることを伝え、
「では、僕は先に休みますんで、気を付けて帰って下さいね。おやすみなさい」
就寝するため自分の部屋へと向かった。
白い薔薇
あんたに汚されるまで
あたいは白いままでいる
他の男に摘ませやしない
鋭い棘で傷つける
あたいも傷ついちまっても
かまいやしない
誰より気高く咲いてやる
そんなあたいは白い薔薇
あんたに枯らされるまで
あたいは若いままでいる
言い寄る男を踏みつけて
あんたのもとへ辿り着く
例え地獄に落ちたって
かまいやしない
闇の中でも気付かせる
そんなあたいは白い薔薇
影も出来ない闇だから
白いあたいは輝ける
赤く開いた薔薇たちは
黙ってうつむき埋もれてしまえ
誰より気高く咲いてやる
そんなあたいは白い薔薇
闇で輝く清い花
あんたに汚されるまで
あたいは白いままでいる
他の男に摘ませやしない
鋭い棘で傷つける
あたいも傷ついちまっても
かまいやしない
誰より気高く咲いてやる
そんなあたいは白い薔薇
あんたに枯らされるまで
あたいは若いままでいる
言い寄る男を踏みつけて
あんたのもとへ辿り着く
例え地獄に落ちたって
かまいやしない
闇の中でも気付かせる
そんなあたいは白い薔薇
影も出来ない闇だから
白いあたいは輝ける
赤く開いた薔薇たちは
黙ってうつむき埋もれてしまえ
誰より気高く咲いてやる
そんなあたいは白い薔薇
闇で輝く清い花