セールスレディ:「○○の△△と申しますが,社長様いらっしゃいますか?」
会社の規模によっては,受付が電話を取ることがあるだろう。
だからまず社長に代わって欲しいという訳である。
用件も聞かずに代わるわけにはいかないので,「どのようなご用件ですか?」と尋ねてみる。
#代わると言っても,私が社長なのだが。
「御社では現在,電気の動力は何kwでご契約ですか?」
「月おいくらくらい支払っていますか?」
「同時に稼動する動力はどのくらいありますか?」
ピンときた。
工場動力用電気料金を低減する装置の,リース契約を勧誘する電話なのだ。
工場には,リフト,グラインダ,洗車機,コンプレッサ,などなど,多くのモーターが置いてある。
電気料金の算定の際は,それらのモータのワット数の総和を求めて電気料金を決定する。
つまり工場内にあるすべてのモーターを同時に稼動するという前提で電気料金を算定するのである。
実務的にはまずあり得ない状態である。
さりとて,ワット数の総和以下で電気料金を決定してしまうと,契約以上の電気を使った瞬間にブレーカーが落ちてしまい,仕事にならなくなるだろう。
何とも悩ましい。
あり得ない条件で契約させられ,毎月高額な電気料金を取られてしまうのだから。
では,ある一定時間であれば,すぐにブレーカーが落ちずに,しばらくは持ちこたえてくれる機器があったらどうだろう。
リフトの上げ下げは1分もかからない作業である。
グラインダでサビ落としをするにしても,5分とかからない。
整備工場で何時間もモーターを回し続けるという状況は,まずあり得ないのである。
月々のリース料金を支払って,ブレーカーがしばらく落ちない機器をリースする。
その代わり月々の電気料金を低減できる。
うまい方法だが,リース料金を取るのが気に食わない。
折角固定費を削減しても,新たな固定費が発生するだけである。
むこうも商売かもしれないが,
こっちも商売である。
さて,セールス電話に戻ろう。
「あー,先月減設したっけさー,半分以下になったのよ。」
「契約のワット数と電気料金の両方とも半分以下。」
「リースの機器とか入れないで,モーター減らして,電力に来てもらって再契約したの。」
「固定費減った~」
勉強したばっかりだから,スラスラ言葉が出てくる。
「あっちゃー,遅かったか」という雰囲気が受話器越しに伝わってくる。
そろそろとどめを刺すか。
「で,何のご用件でしたっけ?」
相手は「お役に立てずにすいません」と言って電話を切った。
電気設備の減設。
実行するのは今年4月の予定である。