・・・つづき。
例年通り内田さんに迎えに来てもらい,例年通り朝食を御馳走になる。
これは毎年恒例。
お土産を渡し,少し話をした後,今年の研究成果を,我が身で直接受ける。
カッシリ掴む。
毛に覆われた腕に,指がムニュッとめり込む。
掴むにはコツがある。
小指,薬指を締める。
肩の力を抜く。
普通の人間ならこれだけで身動きできなくなる。
力で返そうとしたら,内田さんでも難儀するはずである。
掴まれる内田さんの腕には何の力みも感じない。
内田さんと目が合った。
その刹那,突然下に大きく崩された!
マンガ的な表現で,目だけを残して体が落ちるというシーンがあるが,まさにそれ。
気がつくと,内田さんの目の前に,無様に膝をついてしまっている。
???
何をされたのかは,全く分からない。
立ち上がり,恥も外聞もなく,思いっきり掴む。
だがやはり下に大きく崩される。
今度はかなりの勢い。
先に身体が落ち,遅れて頭が落ちたため,首の後ろが痛い。
差し出された人差し指を掴む。
やはり指一本で下に大きく崩される。
逆に掴まれる。
掴まれた状態から突然下に崩される。
崩される速度は速い。
私が長髪だったら,間違いなく総毛が逆立っていたであろう。
下だけではない。
上に大きく揚げられたり,
左右に投げられたり。
崩される直前に,崩そうとする兆候は全く感じない。
とにかく突然,どうしようもなく崩されてしまう。
崩そうとする兆候がないから,頑張れない。
内田さんは「自分の感覚的なものだから教えにくいが」と前置きした上で,こう説明してくれた。
「掴んだ時にな,自分ひとりで立ってる訳じゃないんだ。
掴んだ相手がいて,その相手と一体になる事で立ってるんだ。
その相手が突然消えるとな,自分のバランスが崩れるだろ。」
詳しい原理はもちろん分からないし,
自分ができるようになった訳ではない。
だが実際に技を受けたし,
沢山のヒントを頂戴した。
いずれモノにして,技に応用したいと強く思ったのであった・・・。
・・・つづく。