6月に完成した送信管UV-211(VT-4C)のシングル・アンプですが、これまで211のプレート電圧の変更や、ドライブ管の挿し換え、インプット・トランスの使用、NFBと無帰還との切り替え実験等を行いましたが、今回の投稿を持って211アンプ製作の最終とします。これまで投稿した内容と同じですが、これまでの投稿文を引用し、まとめてみました。
211は、送信管ですが、真空管規格表のアンプの出力管としての動作例を見てみると・・・
Ep:750V Ip:34mA -Eg:-46V RL:8.8KΩ Po:5.6W
Ep:1000V Ip:53mA -Eg:-61V RL:7.6KΩ Po:12.0W
Ep:1250V Ip:60mA -Eg:-80V RL:9.2KΩ Po:19.7W
と、かなりの高電圧動作で、大出力です。同じシングル回路でも、固定バイアスでカソード・フォロワーでの直結回路にすると、出力は約40W位まで伸ばすことが出来るようです。しかし、今回は電源トランスの容量不足のため、プレート特性曲線を参考に211としては比較的軽い動作としました。これについては出力段の設計で説明します。
【アンプの回路設計のまとめ】
・・・・・ 最終回路 ・・・・・
このブログでは、同じ回路のアンプの製作を、おすすめしているものではありません。また、アンプの試聴結果は、個人的な感想です。したがって、このブログ内記事の回路図等は、参考にしないで下さい。同じ回路のアンプを、お作りになるのは自由だとは思いますが、全て自己責任の上、製作くださるよう、お願いいたします。投稿者としての責任は一切持ちません。真空管アンプ製作は、高電圧等による感電死や、火災、火気事故、シャシー加工時での怪我など、注意が必要です。安全第一で楽しいアンプ作りをしましょう。
1.電源回路について
今回のシングル・アンプの製作にあたっては電源トランスが211用のトランスではなく、211フィラメント用の10Vの巻き線がありません。片チャンネル分は2つの巻き線をシリーズにすることで確保できましたが、もう片方のフィラメント用電源の確保のため、10V端子のある12V5Aのヒーター・トランスを追加し、DC点火としました。
B電源ですが、今回は少し変わった電源トランスの使い方をしました。高電圧を取り出すために両波整流用の両端の400V端子を使い800Vとし、シリコン・ダイオードと、高圧用整流管5R4を併用してブリッジ整流としました。これにより、中点の0V端子から整流後の半分の電圧が取り出せるので、初段の電圧増幅用ドライブ管のB電源としました。
B電流はAC170mAからのブリッジ整流のため、取り出せるDC電流は約55%位と考えると約93mAのB電流容量となるため、アンプの総電流はこれを超えないよう設計しています。
2.出力部 (電力増幅部)
前記のとおりB電流の容量が少ないために211の動作は、211プレート特性曲線を参考にRkを1.2KΩ(50V÷40mA=1.25KΩ≒1.2KΩ)としたところ下記の動作となりました。
【本機の211の動作】
Ep:851V Ip:40.8mA -Eg:-49V (Rk:1.2KΩ)
RL:7.0KΩ(14KΩ) Po:約7W
なお、211のフィラメントはDC点火で整流後の平滑用ケミコンも16V6,800μFを1個のみで、ハムバランサーは省略、2本の30Ωの中点から自己バイアス用のカソード抵抗を繋ぎましたがスピーカーに耳を押し付けても、何も聞こえずほとんどノーハムです。
また。211のバイアス電圧監視用として100VDCの電圧計を取り付けました。
3.電圧増幅回路(ドライブ回路)
今回の211のバイアスは、-49Vなのでドライブは比較的楽です。当初は6SN7の2段増幅や、5691(6SL7)のSRPPドライブを考えたのですが、最終的に5691のパラ接続としました。
なお、今回はソケット接続が同じ6SN7を5691(6SL7)の代わりに挿し換え出来るよう、ドライブ段へのB電圧を調整しています。ただし6SN7だと入力感度は低くなりますが、プリアンプ(コントロール・アンプ)を使用すれば問題ありませんし、実験でも報告しましたが外付の入力トランスを使うのもひとつの手です。
4.NFBについて
基本的に3極管アンプは無帰還アンプで作ることが多いのですが、5dBほど軽くかけられるようNFBのON/OFFの切り替えスイッチを付けてみることにしました。
NFBのかけ方ですが、以前にも投稿したように、今回のアンプは試聴の結果、使用しているFW-50-7Sの1次側7KΩを、2次側の4Ω端子に8Ωのスピーカーを繋ぐことで、1次側を14KΩとしています。
この場合、普通は2次側の0Ωをアースして、4Ω端子からNFBをかけます。しかし、この出力トランスは3段増幅用のトランスで1次2次間の位相が逆相なので、今回のアンプのように2段増幅の場合、4Ω端子をアースして、0Ω端子からNFBをかけることになります。
無帰還では波形から、はっきりと低域、高域の減衰が観測できますが、NFBをかけた場合には方形波の波形は全く崩れず、特に10KHzで無帰還では既に高域が減衰しているのがはっきりと見られたのですが、方形波の波形は全く崩れず20KHzでも減衰は見られますが、方形波の波形は保っていて、今回のNFBの実験では周波数特性に大きな改善が見られました。
5.UV-211と、VT-4C との違いなど
211(VT-4C)アンプの音ですが、同じ高電圧動作の845ではダイナミックな力強い音のように思いますが、211は「明るい音」という印象が強く、特に中域から高域での艶やかな音は魅力があります。
なお、今回使用した211は中国製のものですが、GE社の軍用のVT-4Cに挿し換えても、電圧配分はほとんど同じです。
音の違いですが、あるオーディオ評論家が「中国的な音がする」と中国製の球を評価した文章を読んだことがあるのですが・・・「中国的な音」とは、いったいどんな音なのだろうかと考えてしまう。駄目耳のHIROちゃんには、どちらも同じように聴こえます。
【追記】
追加した211のフィラメント用のヒーター・トランスの端子がむき出しです。ここは最高電圧でも12Vの端子なので感電の危険性はないのですが、プラスチックの薄い板を塗装して端子に被せました。
211シングル・アンプを製作してから、暫くアンプ作りはしていませんが、近いうちにまた、何かアンプを作ってみたいと考えています。
今度は何かプッシュプル・アンプでも作ろうか・・・・
では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。 (^^♪