「華岡青洲の妻」有吉佐和子
最近寒くて、引きこもり時間が長くなっていますので、前から読みたかった本がようやく読めました。映画や舞台で何回も上演されているので、大体のあらすじはわかっていたつもりでしたが…。世界で初めて全身麻酔で乳がん手術を成功させた華岡青洲が、その人体実験のために老母や妻を使う、という話だとずっと思っていました。(ネタバレありです🙇)しかし、その実験を望んだのは母や妻の方からで、どちらもが自分の献身的態度を息子・夫にアピールする凄まじい嫁姑の心理的戦い。なんかすごくない⁉どちらもが「自分に薬を煎じてください」といい、青洲は悩んだ末にまず母から。それは軽めの分量に調合してあり、一昼夜で目が覚めるもの。でも母はそんなことは知らないので、自分の手柄を周りに吹聴します。そのあとの嫁のは、毒薬にもなる調合で、かなり重め。三日三晩眠りから覚めない。母は、自分の方が軽かったのだと後から知り、更にもう一回の実験を志願する。嫁も同じく。結果はやはり嫁の方がよりきつい薬で、ついには後遺症で盲目になってしまう。などなど、この間の二人のやり取りが、けたたましく怒鳴りあう、と言うものではなく、静かな中にもメラメラと闘志が燃えるもの。青洲の偉業の裏にはこんな凄まじい信じられない出来事があったのだと、改めて驚かされました。最後に、青洲の未婚の妹が「嫁に行かなかったことが一番の幸せ」と言ったことが、この小説の結末で、納得です。この小説により、「花岡青洲」の名は、医学界だけでなく広く世の中に知られるようになった、という有吉佐和子さんの偉業の作品です。