羽田(&成田)を担当するアプローチATCの方法です。

デパーチャー・アプローチ管制については公式ATCマニュアル(英文) もIFC内に有りますのでご興味のある方は一読を。但し具体的な操作説明というより基礎的な知識関連が主な内容になっているようです。

 

アプローチ管制の基本手順は以下です。

>予定している滑走路とアプローチ方法の連絡

 ↓

>高度・ベクトル(飛行方位)の指示(必要に応じ)

 ↓

>アプローチの承認

 ↓

>タワー管制にハンドオフ

 

使用するコマンドは→こちらで紹介しています。

手順とコマンドを覚えて着陸滑走路から伸びているコーンまで誘導するだけであればそれほど難しくありません。

 

しかし『出来るだけ実運用に近い進入ルートで高度制限も守って』となると難易度が上がります。
現在トレーニング中ですが、準備含めてどのように管制をしているかを少し紹介したいと思います。

 

<実運用のルート、チャートを確認する>

公式マニュアルにはチャートを確認するのが望ましいと記載されています。これと共に実運用で使われているチャートを把握することも必要です。

 

実運用のルートは、FlightRadar24

アプローチ方法は、羽田空港飛行コース

チャートは、AIS JAPAN

で調べています。

『羽田空港飛行コース』のサイトは、直近、過去のアプローチ方式が分かりますので、北風時・南風時・時間帯別でどの方式を取っているかを調べることができます。下図が一例です。

 

日中・北風運用時(好天時以外)の西・南方面からの飛行機に対しては下図の ILS Z RWY34L での運用となっています。

 

チャートそのままだと使いにくいのでIFのマップ画面を利用したものを別に作成しています。

下図の通りアプローチまでのルート含めて通過ポイントと高度・速度制限を記載しています。

アプローチ部は拡大図

 

これに対し、北方向からの進入機に対しては右側の滑走路を使った ILS Z RWY34R 方式なのでこれも同様に作成。

管制時はこれらの図を見ながら速度・ベクター・高度の指示を与えています。

 

同じ北風運用でも深夜・早朝で異なり、南風運用時はさらに時間でRWY 22/23 とRWY 16L/Rを使い分けているのでそれぞれに対応した図を用意して使っています。

 

<上図を使っての RWY34Lアプローチの具体的な指示の方法>

こんな流れでやっています。

 

>予定している滑走路とアプローチ方法の連絡

パイロットのアプローチリクエストに応答して

"ILS approach RWY 34L" を連絡

 ↓

>高度・ベクトル(飛行方位)の指示(必要に応じ)

ACRON→SOLAR のそれぞれのベクターと高度13,000feet, 速度230ktsの指示

 ↓

SOLAR過ぎたら高度5,000feetへの降下指示

途中で減速の指示と解除(忘れがち)

 ↓

>アプローチの承認

ARLON手前で次のベクター指示とILSアプローチ承認

 ↓

>タワー管制にハンドオフ

LOCに乗ったことを確認してタワーに周波数変更指示

 

北風運用時は比較的スムーズに行きそうですが、南風運用時は少し厄介です。

RWY16R/L とRWY22/23 が双方アクティブの場合、IFルールではどちらも使用可能となります。しかしクロスする滑走路を同時に着陸で使うことは避けたいところです。

そのためATC側でどちらを選択するかを決めます。

 

ATCマニュアルにも『ATC側とパイロットで同じチャートを使用する(認識を合わせる)ことが必要』との記載が有りますが、チャートを確認して実運用を理解して飛べるパイロットばかりではないことも考慮する必要があります。

 

その為、RWY16R/L は使用する時間帯に制限が有りますがRWY16R/Lがグリーン, RWY22/23がオレンジだったら時間帯に関わらずRWY16R/L を使用。。でも良いのではと思ってます。

この辺りは各々管制官の判断。

 

ちなみにRWY16R/L へのアプローチ。

パイロットからはほとんどILSでのリクエストが来ますが、好天時はRNAV (GNESS)を使用しているのでGPS アプローチで指示しています。

 

<ビジュアルアプローチ1>

これもまたILSでのリクエストが来ることがありますが、RWY22/23 は、通常好天時、東京湾を横切る LDA W を使用しています。

これはビジュアルでの着陸となりますので、空港近くに来たところで"REPORT AIRPORT IN SIGHT"を送信、レポートが返ってきたところでアプローチ承認を出してタワーにハンドオフします。

 

<ビジュアルアプローチ2>

深夜の南風強風時にRWY16Lを使用したアプローチもあります。

VOR A RWY 16L

時間・天候の状況が合えばこういうのも試してみたいところです。

しかし、パイロット・タワー共にこちらの意図を理解してもらわないと難しいかもしれません。

 

 

<デパーチャー対応>

慣れないうちはアプローチだけ。。が良いのですがデパーチャーに人が入らないとアプローチにコンタクトしてくるのでこちらも対応しないといけません。

 

出発機に対しては

"(check in) with you"パターン時

"Radar contact" で返信

 

"Flight following"パターン時

から "SEND"を押して "proceed on course to xx" で返信

 

いずれもフライトプランを承認しているので高度の承認は必要ないと思っていますが高度変更を要求してくるパイロットに対しては

"ALTITUDE AT DISCRETION" を押して返信

 

フライトプランを確認する余裕があって北方面の"SPOON"を通過する機体に対しては高度制限FL150以下を指示

 

ある程度時間が経ったところで周波数変更を許可して終了

 

<成田対応>

なかなかベストな対応できずこちらは今後の課題。。。

 

まずはこういったところでしょうか。

 

特にアプローチに関してですが、

指示通りに対応できる(してくれる)パイロットばかりでないですし、空港のレンジリングの中に深く入らないとタワーにハンドオフ出来ない方式もあるのでタワー側の理解も必要です。

 

中々思い通りにはいきませんが、このような感じで出来るだけ実運用に近いルートで管制できればと思ってやっています。