時間が経ってしまいましたが改めてブログでも


劇団ドガドガプラス復活祭

『This is…春琴SHOW!!』


第4回 nap29 配信朗読劇

『転生八策2〜坂本龍馬が生きていた明治維新を僕は知っている〜』


自分の中で長く、そして大きな挑戦でもありました。2つのお芝居が終わりました。

ご来場、ご視聴、ご声援

改めて、本当にありがとうございました。



差し入れも…観劇以外の時間でこうしてプレゼントを考えて、選んでくださってとても嬉しいです!ありがとうございます。

お手紙、大切に読ませていただきました!





春琴で演じた「高夏秀夫」という人物は谷崎潤一郎作『蓼食う虫』という小説内の登場人物です。

発表当時はこの高夏というキャラクターを巡って、色々と議論があったようですが、今は「佐藤春夫」がモデルということで落ち着いてるみたい。

※裏話として

役名は「佐藤」が良いか「高夏」が良いか、望月さんから軽く打診されたんです。

分かりやすさを取るか、スマートさを取るか…みたいな感じですかね。




高夏について、台本を読んだ最初の感想は

「設定多っ!!!!」でした。笑


・著名な作家・詩人である

・細君譲渡事件の主要人物であり、親友谷崎から妻をもらい受ける

・10年前に一度もらい損ねている=小田原事件

・戦時中は作家としての活動を行うことが出来なかった

・関東軍所属の記者(ペン部隊)として中国に渡っている

(谷崎サーカスのスパイの任も請け負う)

・臨時裁判で検察官を引き受ける



作家・詩人であることや、細君譲渡事件、小田原事件が事実なのは言うまでもありませんが

後半の3つ…これもほぼ実話なんです…!!


谷崎とは違い、戦中執筆活動を制限された佐藤春夫は実際、中国に記者として派遣されています。

(この時に精神を病み、鬱病を患ったそうです)

また、検察官ではありませんが、戦後の軍事裁判にて、作家仲間を救うために何度も証言台に立っていたとか。

望月六郎の調査力は改めて凄いなぁと思った次第でした。


佐藤春夫は、内向的な性格が多い作家という職業の中で、外交的で陽性な性格であったそうです。

そんな人でも鬱病になるんですから、現地の様子がどれだけ悲惨であったか。どれだけ書きたくないプロパガンダを指示されたのか…窺い知ることができると思います。


今回意識したのは、高夏は"やりたくないことを仕方なくやっている"人だということ。

自由気儘な生活を送っていた谷崎とはとても対照的。

ペン部隊、サーカスのスパイや取り締まり、裁判での検察官にしろ、望んでやっていない。

そこを観ている皆さんに上手く伝えるにはどうしたら良いのか…。

この辺りの解釈は丸山先輩にかなりアドバイスをもらい、助けてもらいながら作っていきました。


最終的には裁判を経て、"自分の意思に反することをやり続ける"ことを選択します。

この辺りの帰着も周りとのバランスを考えながら、演じました。高夏も、谷崎とは違った視点で日本の未来を危惧していたのだなと思っています。




戦後文壇に復活してからは、100人ものお弟子さんを抱えたことで有名な佐藤春夫(あの太宰治も弟子のひとりです)ですが

その陰には、妻=千代子の存在があったからだと言われています。


若く食えない作家志望者が「弟子にしてくれ」と佐藤の元を訪ねてくる。

「しかし、弟子はもうたくさんいるしなぁ〜」と悩む佐藤。

そんな時、千代子は「いいじゃない弟子にしてあげたら。書生さん、あなたお腹空いてるんでしょ?さぁ、うちでご飯食べていきなさい」


こんなやり取りが行われ、気付けば100人を越えていたそうです。

とても素敵なエピソードですよね。

元来陽性で兄貴肌でもあった佐藤春夫と、献身的な千代子の性格の相性がきっと合ったんでしょう。


2度目の「細君譲渡」については、谷崎の手の平で転がされているのを、演じながら実感していました。

加山さんのもっている包容力や品性などがきっとそういう思いにさせてくれたのだと思います。

加山徹さん、あやたん(野村亜矢さん)、本当にお世話になりました!

そして、今回声をかけてくださった望月さん本当にありがとうございました!!




4年ぶりの参加でしたが、客席の皆さんがあたたかくて、とても楽しかったです!!


そして、無事に復活を果たすことができて本当に良かった…!

この2年半のドガドガプラスの苦難は知っていたので

金色夜叉改の初日と、春琴SHOWの千秋楽という特別な日にも、立ち会うことが出来てとても嬉しかった。


また浅草で皆さんとお会いできることを願っています!本当にありがとうございました!!!


渡邊 景日





写真:伊藤勇司