沢山の観たかった映画たちが通り過ぎて行く中で、ブラザー崇功の強烈なススメもあり優先鑑賞
片山慎三監督、初の長編作品
『岬の兄妹』
@アップリンク吉祥寺


最初に前置きしておくと、表現の過激さにより、万人におススメできる映画では決してないです。
ですが僕個人としては、こんな作品に出会うためにずっと映画を観続けている。そんな事を再確認する1本になりました!


まず、冒頭の足を引きずるショットから、その後約30分に渡っての人物紹介なり、売春斡旋に至るまでの経緯なりに、無駄が一切ない。カットが変わる度に必ず新しい情報、新しい展開が入ってきます!
特にタイガーロープの演出は背景や経緯が一発で想像できで秀逸!すごい!


そしてカメラワークの多種多様な豊かさ!
もうね…90分間、映画脳が喜びっぱなし!
シーンを切り取るのではなく、「こう見せる」という意思を感じるカメラワークだった様に感じました。撮影に入るまでどれくらいの準備期間があったか知りませんが、片山監督の客観的に伝える能力は凄まじいと思います。




寂れた港町よろしく、時が止まっているかの様に、兄妹を取り巻く登場人物たちに、人間的な変化・飛躍はありません(男子中学生が1人、成長を遂げるがそれは置いておこう…)
物語90分間をかけて、主人公の兄と妹だけが変化をしていきます。

それをメタ的に表現しているのが、兄妹の家の窓をびっしりと覆っている「ダンボール」です。

映画中盤で兄妹と親しくなる、障害を持った男性の家。彼の家の窓は「新聞紙」で覆われています。
つまりどういう事かというと、
①普通の家:厚さ0。何も貼っていない
②男性の家:厚さ0.1mmの新聞紙
③兄妹の家:厚さ5mmのダンボール
窓を覆っている物体の厚み=一般社会との距離
という構造になっているんです。

そして、貧しいながらも真っ当な生き方をしている兄妹が売春斡旋を始める。社会から隠れる様に生きてきた兄妹が、自らを底辺・低みに追いやる事で一般社会と間違った繋がり方をする……というあのダンボールビリビリ演出!!!
震えましたね・・・。
ライティングの効果も相まって、僕には間違った神が誕生してしまった様に見えてしまいました(笑)



技術的なことばかり書いてしまいましたが、シンプルにね、心にズシーンとくる作品です!!!

兄妹役の2人の演技も凄い!
良夫役の松浦祐也さんの熱演!愛嬌と矮小さ(褒めてます)真理子役の和田光沙さんは当人にしか見えない!!
こんなに感情移入してしまったのは久しぶりっていうくらい兄妹2人を切なく、愛おしく、時に可笑しく観てしまいました。

過激な貧困描写、性描写、差別描写が苦手でなければ間違いなく2019年ベスト級のおススメです。

素晴らしかった!!!
ありがとう!片山監督
ありがとう!松浦祐也さん、和田光沙さん
ありがとう!崇功(笑)