(過去記事を再構築しました。)

1stメジャーアルバム「era」を発売したばかりの、Hakubiというバンドがある。
片桐は女性、マツイ、ヤスカワは男性、という女性ボーカルの男女混合のバンドだ。

とても魅力的なバンドでおすすめなので、紹介したい。

 

 

 



5月のビバラロックのライブレポート↓
心の痛みに正直なバンド、Hakubi~ビバラロックライブレポート



Hakubi


 

 

 

 

Hakubiの楽曲は、作曲は全員で、作詞はVo.の片桐が行っているようである。

その最大の魅力は、まず片桐が綴る正直すぎる心の描写であろう。


生きてるそれだけで許してくれませんか
息をするだけでもう苦しいんだ

(在る日々)

 

 

 

と、実直に語り掛けるその姿は、正直すぎるほどの生きづらさの表明であり、強烈なインパクトを与える歌詞である。

そしてさらに魅力と感じるのは片桐の歌唱法であり、ビブラートで声が震えているというよりは、息苦しさで声が震えていると感じる部分がある。

歌が強かったり弱かったり、感情が歌に上手く乗っている、ということで、歌詞の説得力が増す、という好循環を、片桐の歌声から感じるのである。

 

それは音源よりもライブ音源の方が顕著に魅力がわかると思う。

 

 

 

 

それでも生きてたいと思うから
また今日も夜明けを待っている

(mirror)

 

 

このライブ映像でもわかるように、歌声が力強いうえに震えている。

「涙を流してくれたあなたのため」の部分は、技術的なビブラートでしっかりと歌い上げているが、片桐の歌声特有の震え、があることで、歌にとても魂がこもっていると感じる。

 

また、この歌の前のMCでは、こんなことを話している。

 

「私ははやく死んでしまいたいと思ってた」

 

「音楽さえなければこんなに生きたいと思うことはなかった」

 

冒頭部分↓

 

 

 

片桐の音楽にのせた思いは、どこまでも正直で、どこまでも本気だ。

この会場を静まり返らせる「死んでしまいたい」という言葉、そして歌。

でも「死んでしまいたい」と言われても我々は引いたりはしない。

片桐は自分自身の生きづらさを正直に伝えることで、生きることへの希望を、リスナーへ生きる力を、本気で伝えたいと思ってるように感じるからだ。

 

だからこそ、片桐の生きづらさは、どこまでも正直である。
たとえば「午前4時、SNS」では「もうわかんなくなった、自分のために生きてきたはずなのに」と混乱してる様子が見て取れるし、「自分自身の肯定、存在価値の確認作業の音楽を誰が聞くんだ」と、己の音楽についても自虐的である。
「Dark.」では「自分が好きになれません、決してあなたのせいじゃありません、あなたは愛されてるとかそういうことじゃない」と、自己肯定感の低さをストレートに吐露する。

 

 

 

 

 


僕がそうであるように、片桐の歌う苦しみは、多くの人の共鳴を呼ぶものではないか、と思う。
こうやって歌詞だけを紹介すると、とても暗い人なのか、と思われるかもしれないが、ラジオやインスタライブで話す言葉の口調はとても楽しそうであり、ごく普通の女の子に見える。
歌詞に「あなたは愛されてるとかそういうことじゃない」とあるように、心の傷を負わされる何かがあった、というよりは、あくまで自分自身の心の問題で苦しんでいる、ということも自覚しているような印象もある。



なんだか、普通に生てるだけで、苦しい



端的に言えば、片桐の選ぶ言葉からは、そういった理解されづらい苦しみが読み取れるし、それがいつまでたっても解決されないことも嘆いては苦しみ続けていることもわかる。
そしてその苦しみに思いっきり共鳴し、心を鷲掴みにされた自分がいることに気づいたのである。
さらに、これは自分だけのことではなく、同じように苦しんでいる人が実は世の中にはたくさんいて、Hakubiの歌に救われる人は多いのでは?と思ったのだ。
漠然とした「生きづらさ」に思い当たる節がある人は、ぜひ聴いてみてほしいのである。

歌っていることは、片桐の個人的な痛みであるものがほとんどだ。

でも、だからこそより親近感や、魅力を感じることがあるのではないか?
人々を励ますような音楽が溢れているが、こういった自分自身の生きづらさの表明と、それでも生きていこうともがく姿勢、というアプローチも勇気づけられることがある、と僕は思う。

 


メジャーデビューアルバム「era」収録の「栞」は高畑充希主演映画『浜の朝日の嘘つきどもと』の主題歌である。

この曲はわりと、メジャーを意識したのか、わりと大衆に届くような耳馴染みの良いサウンドになっているが、それでも

 

 

数えきれない光をくれたあなたに

この両手で何が返せるのだろう

 

 

と、自己肯定の低さを隠そうとしない、全く心に嘘をつかない作詞家、片桐の姿がある

 

 

 

 

この調子でブレない音楽活動を続けていれば、どこかのタイミングで必ずや、邦ロックファンであれば誰もが知っているバンドになっている姿が想像できる。
ロック調でありながらオーディエンスが声をあげたり暴れたくなるような音楽性でもないことから、コロナ禍でのコンサートとの相性も良いうえ、歌詞の内容から言ってコロナ禍でこそ響く人も多いのではないか。
Vo.片桐は「負の感情を吐き出す」ことが原点でありこれからも変わらない、とインタビューで述べたことがあり、この音楽性の芯がしっかりしている限り、ある層には必ず届き、生きる力を与え続けると、確信を持って言える。

 

 

 

生きづらさを歌い、生きる力を与え続ける、Hakubiという音楽。

 

 

 

SNSの発信でも良い人たちであることがわかるので、ぜひ今からチェックを。

 

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