取材で、山梨県韮崎市で開催された第51回関東社会人サッカー大会の準決勝に行きました。

関東社会人サッカー大会は、簡単に言うと関東各地の都県リーグのチャンピオンや上位チームによるトーナメント戦で、上位に入ると来シーズンの関東リーグ昇格のチャンスがある大会です。

 

今回は、群馬県リーグ1位のザスパ草津チャレンジャーズと茨城県リーグ1位のアイデンティみらいの一戦を取材しました。

 

ザスパ草津チャレンジャーズは、J2のザスパクサツ群馬の下部組織で、20歳前後のアマチュア選手がトップチーム昇格、Jリーガーを目指し、全国的な温泉地として知られる草津温泉を拠点に、旅館、ホテル、商店で働きながら、活動しているチームです。

 

一方、アイデンティみらいは、茨城県つくばみらい市や取手市、守谷市などを拠点に、サッカーをはじめ、スポーツによる地域貢献、発展を目指し活動をしているチームです。

 

ともに初の関東リーグ昇格に向け勝ち上がってきたチーム同士の一戦は、開始12分にザスパ草津チャレンジャーズが先制するも、32分にアイデンティみらいが同点に。さらに、アイデンティみらいは、前半のうちに2点を加え、3-1とリードすると、後半も優位に進め、結局、5-2でアイデンティみらいが勝利し、決勝進出を決めました。

アイデンティみらいは、先制を許したものの、ボールを保持し、動かしながらチャンスメイクを重ね、ゲームをコントロール。対人の部分の強さやセカンドを含めたフォローの部分でも出足よく、相手を上回りました。

 

ザスパ草津チャレンジャーズは、立ち上がりこそロングボールを中心にチャンスを演出しましたが、時間とともに、個人、組織で上回る相手に押し込まれ、攻撃の形を失い、守勢に回る時間が多くなってしまいました。

試合後、アイデンティみらいの代表も務める富田哲二監督は、「失点したが、その後、落ち着いて自分たちのサッカーができた。」と振り返りました。

 

チームのHPではJリーグを標榜する記述もありますが、富田監督は、「まずはアマチュアのトップ、JFLを目指したい。」と話していています。

 

富田監督によれば、チームは昇格を目指して10年くらい準備をしてきたそうで、今季はJFLや関東リーグでプレーしていた選手が加入したほか、大卒の選手が入り、かみ合っているとのこと。これまでの努力が実を結ぶ形で決勝進出を話しました。

 

そして、将来的には、「地域に根差し、応援してもらい、スポーツ文化の拠点になれたらと思う。」との思いを教えてくれました。

 

すでに、チームの下部組織出身で、Jリーガーも誕生しており、これから先、富田監督を先頭にまいてきた種からどんな花が咲いて、実がなるのか、そして、地域のみなさんとどう喜び合うのか楽しみです。

 

一方、ザスパ草津チャレンジャーズは、3年連続出場も、今回も関東リーグ昇格を果たすことはできませんでした。

 

チームを率いる木村直樹監督は、「個人のレベルが違った。先制点を奪えたが耐えられなかった。振り返ると3点目が大きかった。」と試合を振り返り、今後については「個人的な思いになるが選手には残ってもらい、新たな選手と関東リーグにチャレンジできたらと思う。」と話しました。

 

ザスパ草津チャレンジャーズは、草津温泉という山間地を拠点に、共同生活をしながらプロを目指すという環境もあってか、毎年、選手獲得に苦労している現実があります。ただ、サッカーに没頭できる環境、そして、草津温泉の地元の皆さんが我が子の様に、温かく支えてくれる日々は、選手としてだけでなく、人間性も大きく高めてくれる特別な場所でもあります。この日も、群馬をはじめ、遠方から40~50名ほどのサポーターが駆けつけ、選手たちに最後までエールを送る姿が印象的でした。

ザスパ草津チャレンジャーズからは、トップチームであるザスパクサツ群馬だけでなく、J2、J3で主力として活躍している選手もいます。来シーズン、どんなチーム編成でスタートし、個人、チームともに大きな目標をつかめるか楽しみにしたいです。

 

国内トップカテゴリーであるJリーグでも、優勝争い、昇格残留争いが繰り広げられていますが、各カテゴリーでもシーズン最終盤の大事なゲームを迎えているクラブが数多くあります。今回は、限られた時間ではありましたが、規模の大小にかかわらず、そこにかかわる選手、チーム、そして、地域やサポーターの思いを乗せながら熱戦が展開されていることを感じることができました。