「」・・・話言葉
~あらすじ~
さぁ・・・
君が僕らに伝えてよ
君が僕らに聞かせてよ
ねぇ・・・愁真・・・
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第2話 始まりの朝
それは2月の・・・まだ寒く、雪がはらはらと舞い落ちる朝のことだった。
それはそれは寒くて俺の心は震え上がり、涙とともに凍りついたんだ。
いま、この目の前にある遺骨を見つめて、俺は思い出す。
優しかった親父のことを、誇りだった親父のことを。
思い出す・・・物心ついたころから俺は親父と二人で歩み、ずっとその背を見てきた。
母親はいない。俺がまだ 記憶もおぼろげなころに、母は妻であることも親であることも放棄して、家を出て行ったらしい。
なんでも飲み屋のママかなにかで、酒と男とかねに溺れて家庭を捨てたのだと。
幼い俺にはそんなことは理解できなかったが、周囲の人間たちからそう聞かされたのを、今でも覚えている。
(シタ)
そのため、俺は今日までずっと親父を慕い育った。
(ミジン)
仕事と家事を両立させる親父は、その大変さやつらさを微塵も感じさせない笑顔で、いつも俺に接してくれた。
『愁真のなめなら』といいながら見せる笑顔に、その思いに応えられるように、必死になって努力した。
俺が親父を誇りに思うように、親父も俺に誇りをもってくれる、そんな人間になろうとずっと頑張ってきたんだ。
笑顔を絶やさぬように。それなのに・・・それなのに・・・。
「愁真・・・愁真!!」
仏壇の前で遺骨の収まった箱を抱え座り込んでいると、俺の名を何度も呼ぶ声が聞こえてくる。
マンションの部屋中に響くその声に、驚いて思考は一気に掻き消される。
「私、そろそろ帰るね」
背後から話しかけられて振り返ってみると、そこには元カノの奈々子の姿があった。
涙で顔がクシャクシャになった俺を、奈々子は心配そうに見つめる。
そうだ・・・葬儀の日からずっと家のことを手伝いに来てもらっていたのだった。
「ああ、ごめんな。お前にまで手伝わせて。いろいろ助かったよ」
つい思いにふけっていて、菜々子の存在を忘れていた。
あわててその場に遺骨の入った箱を置き、立ち上がった俺は菜々子に頭を下げる。うちは父子2人家族。親戚は年をとった叔父夫婦しかおらず、葬儀の際に人手が足りずに困っていた。
それを見かねて、菜々子は自ら手伝いを名乗り出てくれたんだ。
「本当にありがとう」
そんな菜々子に、謝罪と・・・今日までの御礼の気持ちもこめてもう1度頭を下げる。
「いいの。おじ様にはお世話になったから」
菜々子も親父を慕い、死を悲しんでくれる人間の1人だったんだ。
「それじゃあね。又、学校で」
「ああ、またな・・・」
微笑み手を振る菜々子の目は赤く腫れて、頬にはまだ涙の跡が残っていた。
それでも俺に気を遣わせまいと、菜々子は部屋を出てから1人で涙する。
そのすすり泣く声は、静まり返った玄関から廊下へと響いていた。
親父は俺だけでなく、周囲のすべての人間に優しく温かかった。
いつも自分のためでなく、誰かのためにそうありたいと思うその心は強く広く。
そうして誰に対しても誠意をもって接する姿は、簡単に真似できるものではなかった。
俺はそんな親父を心から尊敬していたんだ・・・それなのに親父は・・・
七個は玄関から出て行ったのを、扉の閉まる音で確認した俺は、ポケットにしまいこんでいた封筒を手にする。
親父の書斎の机の上に置かれていた・・・遺書。
その無記名の白い封筒の中から、丁寧に折られた2枚の手紙を取りだす。
親父が最後に俺に宛てた手紙。
それを開くと・・・そこには・・・。
第2話 始まりの朝 完