東京に帰り暫く経ったある日、
突然、彼女から電話がきた。

彼女は泣きながら、
「逢えて嬉しかったよ。」
「誰にも話せず、胸につかえていたものが、
やっと取れたよ。ほんまありがとう。」
そう言って彼女は電話を切った。


週末だったのと、たまたま東京駅の近くにいたので、
俺はすぐに大阪に向かった。

あの時、物凄く嫌な胸騒ぎをしたのを、
今でも覚えている。




以前、飲んだ際に彼女を家まで送っていったので、
マンションの場所は分かっていた。


部屋の前で電話しても、ベルを鳴らしても、
返事が無い。

部屋に鍵がかかっていなかったので、
無断で部屋に入ると、彼女は寝ていた。



でも、様子が変だ。



話しかけても、揺さぶってみても、
返事がない。

彼女は、酒で睡眠薬を飲み、
昏睡状態だったのだ。




彼女は自殺しようとした。





すぐに救急車を呼び、
病院へ向かった。




幸いにも、重症ではなく
すぐに意識が戻った。



なんでこんな事をしたんやろう。
一体、何がここまで彼女を苦しめたんやろう。


考えても考えても、分からないまま、
彼女が元気になるのを待っていた。





俺は会社に嘘を言い、休む事にした。




入院中、彼女はずっと黙ったままだった。
俺は何も聞かず、ずっと彼女のそばにいた。



2日後、彼女の意識もだいぶ良くなり、
一緒に退院した。





帰り道、彼女がポツリと言った。


昔、おじいちゃんが観ていた映画があったの。
何が面白いんだか分からず、一緒に観てたのを
覚えてる。

辛い時、悲しい時、どこからともなく現れる寅さん。


笑顔を分けてくれ、またどこかに行ってしまう…

ヒロは寅さんみたいだって。




そして、ずっと泣いていた。
人目も気にせず、彼女は泣いていた。

ごめんなさいって何度も謝りながら。








俺は、彼女を抱きしめていた。









彼女が、自殺をしようとした理由は、
今でもハッキリとは分からない。

ただ、何もかもが嫌になったのと、
楽になりたい一心で
睡眠薬を飲んだのだった。





彼女に気分転換をして欲しいのと、
一人にすると不安だったので、
一緒に東京に来ないかと誘った。




彼女は、頷き一緒に東京に行く事にした。





そして、彼女とマンスリーマンションを借り、
不思議な関係の二人暮らしが始まった。