私は子供の頃からテレビっ子でテレビのない生活など考えられなかった。
情報を得る媒体が他になかったこともあるが、とにかくテレビを付けてさえいれば毎日何かしらの新しい情報が目なり耳なりから入って来ていたので私にとって欠かせない存在だったのは確かだ。
単純に娯楽という点で考えてもドラマ、バラエティ、映画等が毎日日替わりで、しかも無料だったのだからこれほど優れた媒体は他に無いと思っていたのだ。
ところが最近の民放番組を観るにつけ、その存在感が失われようとしているのをひしひしと感じるのである。
ここ数年、テレビを視聴する機会がめっきり減ってしまったと感じる。
確かに現在ではYoutubeを始めとした動画配信サービスが豊富で、テレビの民放を視聴する割合が減るのは理解できる。
だが、基本的に動画配信は目的のコンテンツを探して視聴するのが普通だ。基本的に様々なコンテンツが混在し、目的なく観ておけるテレビとは住み分けが出来ているはずなのである。
私はとりあえず目的無くテレビの番組を探し、少しでも関心のある番組に合わせておくというスタイルをずっと取っていたのだが、最近はそのとりあえず合わせておくチャンネルが見つからない事が非常に多い。
面白動画や過去のテレビ映像を集めて流したり、旅番組や食リポといったスタッフの集めてきた映像にタレントがリアクションを取る、といったいかにも低予算でお手軽な番組がやたらに多い。
ロケ取材やセットを組むような番組はクール毎の特番でしか見られず、しかもその場合は逆にひとつの番組がダラダラとやたらに長い。
たまにゲストの多いバラエティがあると思えばそれは次のドラマの番宣用番組であったりと、とても視聴者の方を向いているようには見えないのだ。
最近では局によっての特色も感じることが出来ず、個性のない番組ばかりで選択肢が見つからないのである。
その結果、仕方が無いので配信に切り替えてコンテンツを探すといったパターンが非常に多いのだ。
基本テレビ番組を選択する私ですら見る番組がないという状況は本来由々しき事態なのではないだろうか。
ましてや我々ほどテレビに執着のない若年層ならばテレビ離れが進むのも当然といえば当然の話だ。
また、もうひとつテレビ離れの原因として感じるのが番組を中断するCMの多さだ。
以前は大体15分に1分程度が普通だったが、今では10分に2分近くCMが流されている。
これでは番組を見ているのかCMを見ているのか分からない位の割合だ。番組内容が面白くとも途中で何度も集中が切れてしまうし、また続きが見たくとも待ち時間が長すぎる。
特に映画を観る場合ひとつのシーン毎にぶつぶつと中断するのだから観る気が持続しないのだ。
以前は面白いCMもあったし、CMから新しい流行が始まったりもしたものだが、最近ではそれほどCM自体に力を入れている様には見えないし、番組間の僅かな時間に流れるからインパクトを感じるのだ。流石にこれほど多いとCMを観る気力もなくなるというものだ。
CMが多いとその間にチャンネルを切り替えられそうだが、困ったことにどの局も似たような状態なので、チャンネルをどのタイミングで切り替えても他局もCMばかりである確率が非常に高い。
これではどの局がという以前に民放自体観る気が起きないのは当然ではないだろうか。
番組の企画自体も安易な上、その番組の見所も少なく内容が非常に薄い。
しかもその少ない見所で最後まで持たせるために番組冒頭からCMに入る直前に見所が次に来るぞと見せかけて最後まで引っ張るその姑息さ。
小手先のテクニックで誤魔化せるのも最初のうちだけであり、民放番組は予算をかけずに不誠実な番組作りしかしていない、という印象しか持てない原因にもなっている。
勿論、実際にスポンサー収入が減り予算的に厳しいのは理解は出来る。
だが、それならば根本的に予算を得る方法や番組制作のあり方を考え直さなければ本当にテレビ放送は情報媒体として役に立たなくなるのではないかと危惧するのだ。