カナのこと | 無

カナのこと

カナはあたしのライバル。

あたしの大好きなキテレツを獲った女のコ。


色白で、パンダ目の女のコ。

まあるいイメージ。


あたしの数少ない最初の友達。



ひつじ年に年賀状をくれて、間もなくどこかへ転校して行った。



思春期になってなにがどうなったやら再会。ウチの玄関でペコリと頭を下げていた。


何通かやりとりした手紙のことは、なんとなくで覚えていた。

メールとかなくてよかったと思う。簡素だけど有象で、存在していたと記憶に貫禄を残す手紙でよかった。

後々に、
存在でほころび、存在を疎み、存在でつなぎとめることができる重要なキィになったから――。


カナはライバルで、あたしの友達でもあった。



始点は誤差。タイミングは奇しくも重なって、キテレツに恋をした。


ほんの2日違いだった。

あたしのためらった湿原を、ひょいと飛び越し、めでたくつきあった。



それからのあたしは最悪だった。

あからさまに避け、避けることができないと、あからさまに酷い目で酷い言葉を言った。全員に聞こえるように。



カナは無視だった。
オトナだったのだろう。

オトナなわけがなかったのに、オトナなふりを続けてくれた。
カナは嫌な女のコで居てくれた。
第三者には誤解のまま、嫌な女のコで居てくれた。


面倒なあたしはこそこそ組み立てていた。
自分の成功も、ふたりの破壊も違くて、
嫌な女のコのレッテルを、時間をかけて組み立てていた。
大袈裟なパフォーマンスをすること無く、純粋なふりをして。

まあ、
まわりはそんなこと、どうでもよかったろうから。
ただつまらない毎日よりは、幸せな話よりゴシップのほうが持ち上がる感覚で。
そこに情はあったのかなかったのか、背中併せに狂気がみえていた。

狂気を摘んで、摘んでは叩き、摘んでは叩き、カナはまっすぐ生きていただけなのに、勝手に増えた埃だらけになった。



あたしはキテレツに熱狂だった。
追い掛けまわしては名前を呼び、手を振り、大好きよ!なんて叫んで。
感情を外へ出しっぱなしだった。叶うことより出すことだけが目的だった。






しばらくして、数カ月も経たないうちに、ふたりは別れた。

原因は何だか忘れた。




カナは相変わらずだった。


話しかけず、話しかけられず。


だけど以前より表情は穏やかだった。




その後もキテレツは誰とも付き合わなかった。




キテレツもカナもまわりもあたしの愚行をトイレに流した。

異臭は何年もそこに溜まったそれと供に落ち、こびり着いたまま卒業式がきた。




カナもキテレツもあたしも、
もう会うことはないと思う。






でもね

カナ、あんたはあたしの数少ない最初の友達なんだよ。


カナを知らないまっさらなあたしの記憶に、
はじめて飛び込んできたあんたの印象は、
あたしの数少ない最初の友達なんだ。