ティーンネージャア昔話 | 無

ティーンネージャア昔話

ハセという男が居た。


某有名大学の夜間卒。
昼間は土方、夜は勉学、真夜中からクラブに励んで居たそうだ。クラブってもちろん夜の。

20代後半だったかあやふやだけど、塾講師をしたり、道路の測量士をしたり、片や自分で法律事務所を作ると言っていた。

御祖母様とふたり。
幼い頃から御祖母様と一緒に暮らしてきたそうだ。

お母さんはたまに仮マンションを掃除しに来るんだって。
ドラマとかで見る、置き手紙に冷蔵庫のなかのおみやげって光景を見た。

お父さんは知らないそうだ。



新海の青をしたシーマにはいつも決まってHIPHOPだった。
車高が近いものだから、地面が近くて。雨の日は特に気をつけて開け閉めした。


煙草は吸えない。気管が弱いらしい。



御祖母様はずっと入院していた。
家を出ないのは御祖母様が寂しい思いをしないように、帰る場所を普遍に置いておきたかったそうだ。
玄関には洗濯と新聞が山積みだった。



いつだったか、一歩も譲らない喧嘩をした。
何をそんなに怒ったか、
何をそんなに怒らせたか、
今はまったく覚えていないのだけれど、
「俺なんか死んだらええんやろ、ばあちゃん死んだら俺も死ぬわ」
なんて言葉が、ずっしり刺さってしまって。


最近気になるのだよ。


どんな酷い男だったかなど、もうどうでもいい。
男など、常に2~3人に心体をときめかせているのだろうと半ばトラウマを与えた男だけれど、
死んだらだめだ。


死ぬわけなくて、そーゆうこと言う奴に限って、ケロッと生きているものなんだって思う。

思うけど、

言葉が尖るほど、心は擦り切れてしまっているもの。



少なからず、
あの日は、
解剖で初めて心臓と呼ばれる、生物の動力を生で見る衝撃のように、
ハセという人間の精神をえぐり出してしまったのだ。



畏れと戦きと後悔と少しの慈愛。

眠れない夜にふと気になる。


どうか
お元気で。


どうか
生きていて。