「美ら海、血の海」馳星周(集英社文庫)読了。

この本は皆さんに、ぜひ読んで頂きたいです、
日本人として知らなければいけない事実、
忘れてはいけない過去が書かれています。

私、小説や映画は勧善懲悪、ハッピーエンドが基本だと思っていますので、
読後は幸福感や安心感に浸ることが多いです。

ただそういう健全な小説を読み続けると、
たまには どうしようもなく「やるせない小説」
読後に虚脱感や後味の悪さの残る小説が読みたくなります。

そういう時、この作家さん「馳星周」はピッタリなんです、
(最近は真梨幸子もちょっとお勧めです)
そしてそんな気持ちになった時の良いタイミングで新刊が出るので、
益々止められません、まるでレッドブルのような魅力を持っています。

小説を色々な人に勧めることが有りますが、
馳星周だけはちょっと躊躇してしまいます、
あまりにもクセが強すぎて好き嫌いがハッキリするからです。

巨大な権力や圧倒的な悪、様々な欲に支配され、本能の赴くままに行動し、負の連鎖の末、絶望の淵に立たされ果ててゆく、
そんな話が多いのですが、なぜかまた読みたくなってしまう作家です。

それはその圧倒的な描写力により、
まるで自らが体感したかのような感覚に陥り、
そして読後に絶望感や虚脱感を感じることにより、小市民である私に、
平凡に生きていることの安心感を与えてくれるからだと思います。

そんな作者が書いた本書、
本来の馳星周を期待して読んだ気持ちとしては、
正直かわされた感が強いです。

が、本書はそのがっかりを差し引いても読みごたえのある、
圧倒的な描写力を持つ作者ならではの作品になっています。

題名からも分かるように本書は沖縄の話です、
でも時代は終戦の直前直後が描かれています。


私は一時期 平和体験学習のボランティアスタッフをしていた事が有り、
その時中高生の引率リーダーとして2度ほど沖縄に行きました。
沖縄では多少の観光をしましたが、
その行程の殆んどは平和について考えようでした。

摩文仁の丘や、ひめゆりの塔、南風原陸軍病院壕跡に行きました、
そして今でも忘れられないのが糸数壕(アブチラガマ)の中での体験です
壕(ガマ)というのは天然にできた洞窟を防空壕等に利用した史跡です。
当時、「壕の地面を掘るといまだに骨が出てくる」と言ってました。
その壕の中で懐中電灯を消し、
真っ暗な闇、迫りくる闇、音の吸い込まれる静寂というのを初めて体感し、
戦争経験者の方からこれらの場所でどんな出来事が有り、何が行われたかを聴きました。

私は別にガチガチの反戦主義者でも非核主義論者でもありません、
ごく普通の平和を望む一市民です、ただこの時に聞いた体験談は決して忘れてはいけない話だと強く感じました。

本書は作者の表現力により、このときの感じを呼び起こされるとともに、この事実を忘れてはいけないと、
より強く再認識させられました。

私はその後観光で
何度か沖縄へ行きました、
だからこそ思うのが沖縄へ行く方はもちろんのこと、
一人でも多くの人に本書を読んで頂き、
沖縄で何が有ったかを知って頂きたいと思います。

何が出来る訳でも、何かをするわけでもありません、
でも忘れてはいけない事実があるという事だけ伝えていきたいです。

偶然ですが、本書も東北大震災が描かれています、
詳しくは触れませんが震災もまだ過去ではないと感じました。