久しぶりの登場。


Jちゃん。



妹、兄ちゃん宣言して、随分経つが、何かあるとメールしてくる。



先日、Jちゃんはバイト帰りに電車の中で過呼吸で倒れ、救急車で運ばれたそうだ。



びっくりした!


とメールが来た。



今まで、Jちゃんは過呼吸もちではなかった。


初めてなったのだ。



昔、就職したての頃、付き合っていた子が過呼吸だった。


帰国子女で、進級が早かったため、普通より1年早く彼女は同期で入社した。


ものすごく頑張り屋であると同時に、帰国であるということでそんな数々のトラウマやストレスを感じていた。


そういうストレスが彼女を過呼吸にしているようだった。


彼女の場合は、外ではならない。なりそうでも、ふらふらしながら必死で自分で意識を保つのだ。


僕と2人きりになったとたん、息が荒くなり倒れることがしょっちゅうあった。


僕はいつも彼女を看病していた。


罵声を浴びせられながらも。


過呼吸になると、意識が分断され、とてつもないことを言うことがある。


でも、分かっていた。


いつも、殴られながらも、発作がおさまるまで抱きしめていた。




だから、ある程度、過呼吸の知識はあった。



Jちゃんに、起こりそうな時は、恐がらずに、あ、またきた!位の気持ちで、なるべく早く備えること。


酸素を吸いすぎないように、袋で自分の息を吸う方法などを教えた。


驚いたことに、病院ではそれは教わっていなかった。



でも、思った。きっとJちゃんは過呼吸になるくらいの悩みを今きっと抱えている。


過呼吸は心因性なことが多いからだ。



メールで聞いた。


お兄ちゃんが聞いてあげるから話してごらん、と。



すると、Jちゃんは答えた。



今のバイト先でセクハラをされていたのだ。



店長に厨房で、体を触られたりしていたのだ。



おにいちゃん助けて。



メールにはそう書いてあった。



今では大抵の会社にはセクハラを受け付ける窓口があり、女性の人権を守りながら、内密に事実を追求するような形になっている。



Jちゃんのバイト先がどうかは分からないが、それなりの大手だ。


ましてや、女の子のバイトを多く使う。


当然あるだろうと思うのだが、どうも、そういうものはあいまいらしい。



以前も、他の店で直訴した子がさらし者になったそうだ。


それはいやだ、と。


店長という立場を利用した悪質なセクハラ。




僕は、少しだけ、鬼の仮面をかぶることにした。




詳しく事情を聞き、そういったことをあたかも偶然見た客の1人を装い本社にメールをした。


「○○店の店長のセクハラについて」という題名で、店長の悪態ぶりを書いた。



前々から、僕もあの店長の仕事のやる気なさと、振る舞いには疑問を抱いていた。



いつもバイトの子、特にJちゃんとは、ベラベラ話ばかりしている。



以前から、誘いばかり受けていることもJちゃんから聞いていた。



正直俺もむかついていた。



彼は来月結婚するのだ。先日、偶然綺麗な彼女を見た。



それなのにだ。




俺は鬼の仮面をかぶりました。




俺は、その体を触るようなところを実際は見ていない。



見ていないけど、Jちゃんの言葉を信じて、Jちゃんを守るために行動した。



彼は、このことを会社に追及され、店長ではなくなるだろう。



部署移動もきっと免れない。



セクハラとはそういうものだ。



ましてや、客からのクレームだ。



会社にとって見れば、一大事だ。変な噂を流されては店はやっていけない。



だけど、もし、これが、誤解だったら、俺は、彼の人生を狂わせたことになる。



Jちゃんのためだとしても。



結婚も駄目になるかもしれない。



懺悔。




だけど、俺はJちゃんの言葉を信じる。



このことがストレスで、バイトにも出られず寝込んだままの状態なのだ。



その事実は真実だと信じる。



あの仕事が、大好きなJちゃん。




そのJちゃんのために、僕は鬼になった。