昨日の続きになります・・・。

では、どうぞ。


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入絵加奈子キムの「命あげよう」は美奈子さんもそうでしたが、母親が子を想う気持ちを深く切なく歌い切る、ミュージカルナンバーの中でも大変難しい曲です。
今回、加奈子キムはその想いと共に、美奈子さんに対しての想いも加わり、聴く者を釘付けにする迫力がありました・・。
「これが、私のキム・・美奈子さん聴いてくれた・・」
歌い終わり宙を見上げた加奈子さんの顔は、とても優しく微笑んでいました・・。
本当に素晴らしい歌を聞かせて頂き、開演10分で既に涙が止まらない状態でした・・。
今回は40名近いカンパニーが集います。この三回忌、凄くなりそうな予感がしてきました。
(後に、この予感はものの見事に的中しますが・・)



加奈子さん退場の後、ステージは再び暗転・・スクリーンにカンボジアと見られる幼い子供達の写真が写ります・・。
一見して、決して裕福では無い貧困層の子供達の写真が次々と写されていき、突然舞台にスポットが当たります。
舞台前面に美奈子さんが主演した「ミス・サイゴン」初演組でジョン役で出演した園岡新太郎さんが「ブイ・ドイ」を歌います。

バックの雛壇には16名の男性カンパニーがコーラスで参加、勉強不足で、おひとり御一人の名前がご紹介出来ませんが「ミス・サイゴン」初演組としてのキャリアで、現役でも活躍なさっている方々です・・。
考えて見れば、これだけの舞台俳優が一箇所に集まる事は、今迄に無い事で、今回、事務所、劇団の枠を超え、一人の歌姫・舞台人「本田美奈子.」さんの為に集まった奇跡的な事で、私もその現場に居合わせて頂かせた事は本当に感謝したいと思います・・。


「ブイ・ドイ」の曲目は「ミス・サイゴン」の中では戦争という中で子供達が犠牲になる事に、居たたまれない苦しさを表現したもので、「大人のエゴ」に警笛を促すメッセージ性の高い曲です。
この曲は私も好きな曲で以前、ミュージカルのCDを買い求めた時に、坂元健二さん、今井清隆さんもご自身のアルバムでこの「ブイ・ドイ」を歌われています。
聴いてみて、共に曲のイメージをありのままに、その世界観を見事に表現されていて、大変感動した事がありました。
今、目の前で園岡氏とカンパニーがその「ブイ・ドイ」を熱唱されていますが、やはり生歌の迫力は違いました・・。男性ボーカルの迫力と、何処までも伸びる歌唱で、理不尽な世界で犠牲になる子供達の未来について問う凄みに、聴く者は身動きが出来ませんでした・・。

歌唱の終盤、今迄、バックにスライドで次々映されていた子供達の写真にテロップな流れました。それを見た時、なんとか押さえていた涙を止める事は出来ませんでした・・。
「この写真を撮られたカメラマン、遠藤俊介氏は今年7月14日、
急性骨髄性白血病にて逝去されました。心からご冥福をお祈り申し上げます・・。」

これは、単なる偶然でしょうか?・・同じ病と闘った者が時代を超え、争い、貧富、差別の事について触れ、それを私達に伝えようとしてくれた事・・。きっと、何処かにその想いが通じるものが引き合わせたものだと思います・・。
しかし、後でお聞きしたボス(高杉さん)のお話で、この事は確信に変わりました。
実はこの場面での画像をボスが探していたのですが、偶然、書店で一冊の写真集を手に取ったそうです。
ボスは大変この写真を気に入り、早速、相手側と連絡を取ったところ美奈子さんと同じ病で逝去された事を知ったそうです・・。もはや、偶然を通り越したもの、美奈子さんが導いてくれたに他なりません。
美奈子さんも生前、やはり戦争や争いによる悲劇でいつも子供が犠牲になる事、日本でさえ理不尽な事件事故で多くの命が失われている事に大変、心を痛めていました・・。
命の大切さ、生きる事の意味をいろいろな形で私達に示してくれる美奈子さん・・本当にこれからの時代に必要な人だったと思います・・。


こんなにも多くの人の想いが集まった今回の三回忌・・、美奈子さんだから出来た事でしょう・・。
美奈子さんの雄姿は舞台で見る事は叶わないですが、その想いがこんなにも多くの人に受け継がれていってくれている・・、そう思うと、なんか嬉しくて涙が「これでもか!」というくらい後から後から溢れてきました・・。


~つづく~