響け! 雨に輝く路上ピアノ | ヒロポタンの足跡

ヒロポタンの足跡

これは、気まぐれヒロポタンのたどった足跡(主に飲食系 その他諸々)を忠実に、そして、写実的でありながらも叙情的な文章で綴った、臨場感溢れる心温まる手記です。

 土曜日、我が家では極めて珍しく親族以外の客人を招いた。うちのカミさんの女子力高い系リア友として数年前から親交を深めているユリちゃん(仮名)さんである。現在婚活中の彼女は時短料理が得意で、時間に追われている我が家において効果的な政策提言を適宜教示してくれるほか、高い芸術的センスを感じる自家製アルバムも見事に作り上げてみせる。そんな才女を招き入れるので、整理整頓に無縁の我が家としては早朝から掃除片付けに大忙しだったのだ。

 2階のワークルームでカミさんと彼女が懇談中の時は、自分は自らホスト役を買って出てマメマメしく紅茶や菓子類を差し入れして、両者会談の円滑な運営に尽力したのだった。およそ2時間に及ぶ懇談会は無事終了し、彼女は笑顔で帰っていった。将来、彼女が毎夜夢を見ているという俳優の向井理さんのような王子さまとの運命的な出逢いを経て、そしてめでたく結婚した暁には、是非とも私的トゥー・プラス・トゥーを我が家で開催したいと、自分も夢のような構想を描いている。

 さて、この日の夕食は、両者会談の成功に協力してくれたワガコを含め、家族3人で打ち上げをすることにした。打ち上げの会場に選んだのは餃子の王将だった。当初、うちのカミさんはこの選定に難色を示した。その理由を聞くと日本蕎麦や冷静パスタ等サッパリとした麺類を所望していたからであった。しかし、消えそうな声で、「王将の餃子がタベタイ…。」というワガコのけなげな訴えにカミさんが折れた。こうして、小雨舞い散る中、ハンドル操作をカミさんに委託し、餃子の王将がある夜のインターパークへ一路車を走らせたのだった。

 人集りの形成されている王将前に到着したのは、時計の針が7時を指す頃だった。気温は身の毛もよだつ19度。半袖のTシャツ一枚という格好に心細くも後悔の念を抱いたが、およそ10数分待ちで入店を促すコールが耳の先端に温かく届いた。


 
 餃子の王将における6月のキャンペーンは、通常の餃子と同額で食べられるにんにく激増し餃子定食、並びに、辛さ激増し野菜たっぷり担々麺である。自分としてはしばらくご無沙汰している回鍋肉のセットメニューで気持ちが固まりつつあったが、カミさんから、「にんにくの力を借りて、日ごろからの蓄積した疲労を払拭されてはどうですか」と、当を得た心温まる助言をもらったので、ここは妻の優しさに素直に従うこととした。少食女子を貫いているカミさんは、件の辛さ激増し担々麺に挑む構えをみせていた。大丈夫かと案じたが、カプサイシンの力を借りて日ごろから蓄積した脂質を燃焼させたいという本人の意志を尊重し、それ以上は口出しすることを慎んだ。なお、ワガコは守りの姿勢を崩すことなく通常の餃子ダブルを頼んだ。
 待っている間、食べモノに限らず「激〇」とか、「超…」にカラダが反応してしまう事をカミさんがこっそり打ち明けてくれた。そして、「激めん」というカップ麺の話に大輪の花を咲かせていると、満を持して続々と餃子達が目の前に敷きつめられた。

〈進捗率5%〉

 定石通り、全員見事完食した。

〈進捗率100%〉

 
 駐車場へ向かう途中、ワガコが道路に描かれた白く輝く鍵盤を軽快なステップで飛び跳ねながら渡った。ワガコの奏でた幸せを呼ぶメロディが賑わう夜の街を突き抜けて、ユリちゃん(仮名)さんの胸の真ん中へ、どうかしっかり届きますように。