「記憶に刻め」は突然に… | ヒロポタンの足跡

ヒロポタンの足跡

これは、気まぐれヒロポタンのたどった足跡(主に飲食系 その他諸々)を忠実に、そして、写実的でありながらも叙情的な文章で綴った、臨場感溢れる心温まる手記です。

 まだ、間に合う。記憶にしっかり刻まれているので。なんの事かと言うと、このタイトルにある「記憶に刻め」という名の高級食パン販売店の事である。栃木県北部の大田原市に、慎ましくもハデ目な装いで店舗を構えている。どうもこの上から目線的なネーミングに少々当惑してしまったのであるが、確かに一口食べた瞬間、してやられてしまう旨さを、悔しくも否めなかった。


 先日、那須高原における宿泊施設の利用状況現地調査の帰り道、偶然この店の前を通った。当時の運転はウチのカミさんだったのだが、この店の前を通過しようとした時、「あ!有名な高級食パンの店だ!」と叫んだ。その顔には、「買いたァ〜い。食べたァ〜い。」の文字が如実に現れていた。普段、一般庶民の我が家にはおよそ縁のない高級食パンだが、幸い行列も形成されていないようなので、これも社会勉強の一つと捉え購入することにした。
 なんとなく、昭和レトロとも大正ロマンとも見える看板や包装紙のデザインが、宇都宮にもあったようにぼんやり考えていたところ、やはり「相合い傘とイチゴちゃん」という姉妹店があることを知った。スタッフさんが教えてくれたのだが、ウチのカミさんは既に知っていたようである。そうなのである。この「相合い傘とイチゴちゃん」という、高級パン販売店とはまるで想像もつかないネーミングとシュールな絵画が描かれた店の前を外回りの折によく通過するが、常に開店前から行列を作っているのを、「どうなの!旨いの?」と、懐疑的な気持ちを若干抱きつつ目の白いところでいつも見送っている。
 折角なので、店内に入ってみた。広さはなく、陳列されているのは食パンのみで、他に玉子サンドのようなシロモノが貯蔵ボックスにひっそり置かれていた。


 1斤購入するから切ってほしいとスタッフさんに依頼したところ、焼き立ては柔らか過ぎて切られないと満面の笑みで返ってきたので、帰宅後自ら切断してみることにした。なお、玉子サンドも、見つめられたままその場を後にするのは玉子サンドが可哀想だったし、寂しそうに「お願い。アタシを買って…。」と耳元で囁かれたような気がした(勝手な妄想)ので、2パック買うことにした。
 帰宅後、恥じらうパン達のあられもない切断面の姿を撮影してから、ゆっくりとゆっくりと、その柔肌を擦るように味わった。