こだま号でのんびりと旅している未投稿記事が一つある。厳密には、まだ文を紡ぐ前だからこだまにも乗車していない。とすると、御徒町のガード下あたりで蛸ワサなどをつまみながら呑んでいる段階…ということになるのだが。なお、未投稿記事がこだま号で旅しているという言い回しについては、前述「カイの公式理論」を参照されたい。
独身時代、西へ一人旅に出る時、場所によっては積極的に寝台急行列車銀河号を利用していたが、その際は必ずと言っていいほど早めに東京へ出て、1~2時間程度、件のガード下で、それこそ蛸ワサや焼き魚等を頬張りながらコップ酒を身体の隅々に染み込ませて、旅気分を極限にまで高めて銀河へ乗り込んだものである。もちろん缶ビールやワンカップもしっかりバッグにしのばせて乗車し、窓の外を流れる夜景を肴にしながら、更には規則的な列車の揺れと酔いをも全身で味わって、次第にまどろみの渦の真ん中へグルグル吸い込まれるように寝落ちしていったのだが、昭和の高度経済成長を支えた郷愁に満ちた急行銀河は役目を果たし、今はもうその雄姿を見る事は出来ないのである。
こんな話を書き連ねると止まらなくなってしまうので、元に戻そう…。いつまでも御徒町で呑んでいると、こだま号にも乗れなくなってしまう。そうでなくとも、既に記憶のディテールが時間とともに消失しつつあるのだ。
さて、記録に残すべき記憶は、身も心もリフレッシュした去る6月13日から15日に及ぶ異例の私的3連休最終日におけるランチの件についてである。短時間の周期で晴れと雷雨が繰り返される不安定な天候は火曜日も同様だった。ワガコの登校を玄関先で激しく手を振って見送った後、この日のランチのあり方についてカミさんと一触即発の至って建設的な意見交換を熱く展開したのだった。その結果、平日ランチの最有力候補として名前があがったのは、宇都宮市役所の西側界隈にある「土鍋ごはん まんま」という定食屋だった。発案者は自分だが、知っているのは名前のみで、当食堂の情報は何も持ち得ていなかった。しかし、カミさんは流石に携えていたようで、話を聞くと、ご飯は当店自慢の土鍋で炊くらしい。従って、ご飯そのものがとても旨いらしいのだ。これは質的に期待が持てると判断し、二人で激しく意気投合のうえ席の予約電話を入れようとしたのだが、再三にわたり電話したものの、結局通話は叶わなかった。この日は生憎の臨時休業と勝手に判断し、気を取り直して、意気投合度同率首位の「さくら食堂」に電話したところ、元気いっぱいに「営業中ですよ」の声を聞くことができたので、入道雲が立ち上る空の下で車を急ぎ走らせた。