実は、飛行機は、まだなぜ飛ぶのかよく分かっていないことがあります。
昆虫は、横風のような強い外乱を受けても墜落しません。それは何故でしょうか。こんな昆虫飛行のメカニズム解明は羽ばたきロボットなどを使って行われてはいますが、まだ、よく分かっていないことが多いのです。
人間は、空気力学の様々な理論を蓄積し、ジェット機を設計できるようになりましたが,毎秒20~1000回も羽ばたく昆虫の翅がなぜ自重を遥かに上回る揚力を発生できるかについては、いまだに多くの疑問が残っており、理路整然と説明できる理論がないのです。
飛行体の流体力(揚力)の発生原理は、サイズによって大きく異なります。何百人もの乗客を乗せたジャンボ旅客機が主翼で自重を上回る大きな揚力を生み出せるのは、流線型の断面をした翼の上面と下面を流れる空気の流れの速さの違いを都合よく利用できるからです。
こうした研究に先鞭を付けたのが英国ケンブリッジ大学のエリントン教授。同教授は、「フラッパー」と呼ぶ羽ばたきロボットでの実験から、全長数十mのジャンボ機のような大型飛行体と全長数cmの昆虫では翼に及ぼす空気の慣性と粘性の働き方が違うのに気付き、1998年に発表しました。大型飛行体では慣性を主に考えればいいが、昆虫のような小型飛行体では慣性と粘性が同時に効いてくるというのです。
そのため、飛行機の主翼周りと昆虫の翅周りの空気の流れの性質は全く違い、昆虫の場合は翅の前縁に出来る渦が揚力発生に非常に重要なことが分かりました。飛行機の場合、主翼周りの空気の流れに乱れは厳禁で、流れが翼から剥がれて渦が生じたりすれば揚力が落ち、失速してしまいます。
さらに1999年には米国カリフォルニア大学バークレー校のデンキンソン博士が、同様に羽ばたきロボットの実験から、昆虫類は羽根の横方向の「8の字回転」からも揚力(回転揚力という)を得ているとの説を唱えました。
昆虫の羽ばたき飛行を厳密な幾何学、運動学及び力学のモデルに基づいて解析して構築した計算式による、静止・前進・旋回を含む全ての自由飛行のシミュレーションは日本でも既に行われています。
ジャンボ機のような翼とエンジンで飛ぶ人工飛行体の飛行原理と、翅の羽ばたきだけで飛ぶ鳥や昆虫のような生物飛行体の飛行原理は違うのかもしれませんが、もっと詳しく調べれば、何か共通の原理が見つかり、両者の飛行をオーバーラップして記述出来る理論が生まれるかもしれません。
この研究で実証出来れば、小鳥サイズの小型飛行体や昆虫サイズのマイクロマシンなどが出来て失速しない安全なジャンボ機の設計にも役立つかもしれませんね。