瀬々敬久監督「ヘヴンズストーリー」を観た。

4時間38分という途方も無い長編映画。
1日2回廻ししかできない映画館泣かせの映画であり、
レイトショーでもやろうなら終電が無くなるという
興行には全くもって不都合な映画だ。

しかし、素晴らしい出来だった。

色々な人に見てほしいと思う。

映画がテレビドラマの延長線上に置かれ、
制作者も観客もテレビドラマを観るように映画を観ている今、
この映画は日本には必要だと思う。

この映画は、生と死を扱っている映画だ。

人間の生と死
家庭の生と死
都市の生と死

何故殺したのか判らない少年
妻子を殺され犯人をこの手で殺すと言っている夫
父母姉を殺され独りになった少女
復讐代行を裏でしている警官
事故とはいえ警官に夫を殺された家族
盗みをする警官の息子
若年症アルツハイマーの人形作家
嗚咽する老人
殺される中年男性
片耳が聞こえない若い女
妊娠している若い女

人形と人形遣い

雲上の楽園といわれた廃墟
海沿いの団地群
丘の上の団地群

死んでも残る記憶
死んでもつながる未来
忘れかけていた衝動
生きてきた意味
新しい生命
新たな決意

この映画に詰まっているモノ達だ。

シナリオは1ページ1分と言われているから、
278ページの小説だと思っていい。

夜半から本を読み出して、途中で止めて寝ようと思うが、
止まらず結局明け方までに完読してしまう。
そんな感じの映画だと思う。

この「映画であるべき存在の映画」が自主制作というのは悲しい状況だ。
日本映画自体が生死を彷徨っている。
マンガや原作に現を抜かす前に大手には考えて欲しいものだ。

制作費の回収には、ほど遠いと聞いている。
機会があったら是非、映画館まで足を運んで欲しい。


これは映画館で観るべき映画である。