避難所生活では情報収集も大切(写真/AFP=時事)

© NEWSポストセブン 提供

 避難所生活では情報収集も大切(写真/AFP=時事)

 

 

 

 今年7月、記録的な豪雨が九州から本州までを襲い、各地で甚大な被害を出した。さらに避けられない地震、台風、噴火……迫りくる自然災害からどのようにして身を守るのか──改めて考え直す時がきている。

 

〈大雨特別警報〉〈最大級警戒〉〈氾濫危険情報〉、それに加えて〈緊急地震速報〉まで……。7月3日からの豪雨が長引き、連日テレビ画面に溢れたのが「警報」だ。

 

 テレビ各局は2011年の東日本大震災を教訓に、災害警報を積極的に発信するようになった。赤や黄など目立つ色を多用した画面に、切迫感のあるテロップが並べられる。番組中ずっと画面の左側や下部に情報が流れる“L字放送”も珍しくなくなった。

 

 だが、これだけ警報が多いとかえってどうしたらいいのか迷ってしまう。

「テレビの災害情報は大雑把なもので、実際に自分がどうすればいいかは速報・警報を見ただけではほとんどわかりません。ただ、現時点で災害の状況がどうなっているのかを知ることはできます」

 

 そう語るのは災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏だ。警報の読み取り方は、災害の種類によって変わってくる。地震、津波、土砂災害は、テレビの警報でどう動くべきかがわかりやすいという。

「地震は『緊急地震速報』の時点で、落下物から身を守るか、より安全なスペースに逃げ込むかの対処の方法しかありません。沿岸地域や津波の到達エリアとされている場所では津波警報に留意し、避難を開始すべきでしょう。地震発生時には土砂災害も発生するため、斜面に近づかないなどの注意も必要です」(和田氏)

 

 一方、わかりにくいのが水害だ。台風・豪雨については昨年6月から「警戒レベル」が用いられるようになった。

「警戒レベルは5段階で、行動を伴うものはレベル3の『避難準備・高齢者等避難開始』が出た時から。レベル4は『避難勧告』及び『避難指示(緊急)』にあたり、危険な場所から安全な場所に全員避難という市町村からの要請・指示(緊急)です。レベル5は『すでに災害が発生している状況』であり、命を守る最善の行動をしなくてはなりません。『大雨特別警報』は警戒レベルが最も高いレベル5に位置付けられています」(同前)

 

 河川水位の警報も、「氾濫警戒情報・洪水警報」はレベル3に相当し、「氾濫危険情報」や「土砂災害警戒情報」はレベル4、「氾濫発生情報」はレベル5にあたる。

「ただし、テレビの警報は広範囲を示すもので、自分のいるところが該当するかどうかを把握できなければ行動すべきか否かはわかりません。レベル4の『全員避難』も、安全な場所にいる人も全員が対象という誤解がありますが、『危険な場所から全員避難』という趣旨です。早期避難でない場合は、かえって避難経路などで被害を発生させる可能性があります」(同前)

 

 市町村からは、防災無線や広報車による通達があるが、届かないことも多い。テレビで警報が流れた場合は、自治体の情報を確認すべきだと和田氏は語る。

「市町村のホームページや公式ツイッターなどにも細かい情報は出ます。テレビで情報を把握したい場合は、リモコンの『d』ボタンを押すと、自分の住所に該当する地域の災害状況や交通情報なども確認できます。テレビに住所登録しておくといいでしょう」

 

 地震、津波、大雨、氾濫、竜巻、噴火……今年から「熱中症警戒アラート」も発信される。テレビから流れる多すぎる警報から、本当に必要な情報を見分けられるかが重要になってくる。

※週刊ポスト2020年7月31日・8月7日号