「私が嘘を言うわけないじゃないですか!」と息巻いたが…(時事通信フォト)

 安倍晋三首相の言葉に、「誇張」や「フェイク」、「大風呂敷」が交じっていることを国民は気づき始めている。政権復帰からの7年間、首相とその周辺は、嘘に嘘の上塗りを重ねてきたのではないか。いつから安倍首相はこんなに嘘をつくようになったのか。

 

 安倍首相が自信を持って嘘をつくようになった転換点は、安保国会のこの言葉ではなかったか。

「(憲法解釈の)最高の責任者は私だ」(2014年2月)

 

 そう宣言すると、歴代内閣が守ってきた憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認することを閣議決定した。

 

 これをきっかけに安倍首相は、自分の言葉どおりに大臣も官僚も動き、発言を真実にできると異常な自信を持つ。憲法9条改正について、自信満々の嘘がポンポン飛び出すようになった。

「採択されている多くの教科書で『自衛隊が違憲である』という記述がある」(2017年5月)

 

 しかし、そうした記述の教科書はなかったことを自ら閣議決定している。

「資料を出せと言うのであれば出させていただく」「私が嘘を言うわけないじゃないですか!」(2019年2月)

 

 そう色をなしたこともある。安倍首相が国会や講演で度々紹介してきた、自衛隊員の子供が涙を浮かべて「お父さんは憲法違反なの?」と尋ねたというエピソードが本当なのかを質問されたときだ。

 

 首相は「(父親の)航空自衛隊の幹部から直接聞いた」と語っていたが、後に、「防衛省の秘書官を通じてうかがった」と修正、証拠の資料とやらは提出されていない。

 

 この総理はやがて世界の景気さえ言葉で動かせると思い込むようになる。伊勢志摩サミット(2016年)では、各国首脳でただ1人、「世界経済はリーマンショック前の状況に似ている」との認識を示し、その年の消費税増税を延期する。逆に、昨年の消費税増税の際には、「増税の影響は小さい」との認識で実施に踏み切った。

 

 首相が経済政策についても自信満々に嘘をつくようになると、役所はそれに合わせて「統計資料の改ざん」を始めた。

「アベノミクスの目標であるGDP600兆円は2020年頃には達成できる」(2015年11月)

 

→内閣府はGDP統計の計算方法を変更し、2015年度のGDPを30兆円嵩上げしたが、現在も未達成。

「裁量労働制で働く人の労働時間は一般労働者よりも短い」(2018年1月)

→この答弁が厚労省の不正な調査データに基づいていたことが発覚。

「今世紀に入って最高水準の賃上げが継続している」(2019年1月)

→厚労省の毎月勤労統計の不正が発覚、実質賃金が高く偽装されていた。

 

 嘘が出るわ出るわ、状態なのである。

※週刊ポスト2020年3月13日号