気になるニュースの疑問をひもとく、「はてな」。
週末、都内の国営昭和記念公園を訪ねると、そこには、子どもがたくさん元気に遊んでいた。
30代(子2人)「(子どもは)こういう集まる場所になるといるよね」
30代(子3人)「フードコートとか、すごく混んでますよね。子連れの方が多くって」
家族のお出かけスポットは、どこも子どもでいっぱい。
お母さんたちに話を聞いた。
30代(子1人)「わたしの周りも結構、赤ちゃん生まれている子が本当に多くて」
女性(子2人)「あんまり少子化って思わないかも」
ところが、24日に発表された2019年に生まれた子どもの数を示す出生数は、86万人余りに。
これは、1899年の統計開始以来、過去最低の数字で、想定を上回るペースで少子化が進んでいた。
ニッセイ基礎研究所 准主任研究員・天野馨南子氏「出生数の減少が、今まで経験したことがないという意味では、(今後は)考えたことがない世界です」
進む少子化で、日本の未来は未知の世界に?
30代(子1人)「(自分が)老人になったとき、誰が支えてくれるのかな」
60代「村がなくなったりするとか、日本はどうなっちゃうんだろう」
取材班が向かったのは、北海道・札幌市。
市民が集まる大型ショッピングモールに行くと、キッズスペースでは、たくさんのお母さんや子どもたちが遊んでいた。
この札幌市、全国で人口が4番目に多い日本を代表する大都市の1つだが、実は、出生率はかなり低い数値となっている。
よく耳にする「合計特殊出生率」。
これは、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の平均を表したもの。
現在の出生率は、全国平均で1.42。
この数値は、人口維持できる基準とされる2.07を大きく下回っているが、札幌市は、さらに低い1.16。
たくさんの子どもたちが元気に遊ぶ中、4歳の子どもを連れたお母さんに話を聞いた。
40代(子1人)「(子どもは何人?)1人です。(年は)46なんです。高齢出産なんで、もう打ち止めかな」
8年前、38歳の時に結婚したという女性は、42歳の時に第1子を出産し、現在、親子3人家族。
遅めの結婚、そして出産となったのには、ある理由があった。
40代(子1人)「わたしもやっぱり、仕事を頑張りたいなって。やりたい仕事だったので、そういうふうに思っていたんです、若い時は」
大学を卒業し、広告関係の仕事に就職。
仕事に打ち込んだことで結婚が先送りになり、いわゆる“晩婚”となったという。
札幌市によると、この晩婚化が、出生率が低下している1つの原因になっているという。
札幌市政策企画部・成澤元宏課長「30代以降に結婚してから子どもを産むので、第1子を持ったとしても、第2子を産むかどうかってところで、健康上、あるいは年齢上の問題でちゅうちょしてしまう方が多い」
一方で、少子化問題や未婚化に関する数々の著書を持つ博報堂の荒川和久さんは、「よく出生率が上がらない原因を『お母さんたちが子どもを産んでいないからだ』と勘違いしている方がいるが、お母さんたちが産んでいる子どもの数の比率は、60年間ほぼ変わっていない」と指摘する。
例えば、第2次ベビーブームの真っただ中だった1972年、1組の夫婦の間に生まれた子どもの数は、平均2.2人だった。
一方、2015年の同じ調査では、平均1.94人。
1972年と大きな差はない結果となっていて、1人のお母さんが産む子どもの数自体は大きく変わっていないことがわかる。
荒川さん「合計特殊出生率というのは、未婚の女性も母数に含まれる。出生率が減っているというのは、お母さんが産む子どものかずが減っているというより、お母さんになる人が減っているから。少子化ではなく、“少母化”なんです」
実際、札幌の町からは、結婚についてこんな声も。
30代(子1人)「相手がなかなか見つからない、同い年とか同じ世代は、なかなかいない」
40代(未婚)「縁がなかったんですかね。子どもは好きだし、ほしいんですけど。縁がない分には仕方がない」
女性から漏れたのは、男性の結婚意欲の低さ。
これについて男性は...。
20代(未婚)「今は結婚しなくても、自分1人でやっていけたりとかして...」
少子化対策の専門家・ニッセイ基礎研究所 准主任研究員の天野馨南子さんに話を聞いた。
天野さん「日本の『少子化』、『出生率の減少』は、カップルの減少なんですよ。どうしても男性が結婚しようというふうにもっていかないと家庭が形成できない状況」
50歳まで一度も結婚したことのない人の割合を示す生涯未婚率を見ると、女性は7人に1人ほどだが、男性は4人に1人。
天野さん「日本の未婚化を大いにけん引しているけん引役は、“男性の未婚化”ということになります」
しかし、男性に聞くと、こんな悩みも。
30代(未婚)「今の給料でやっていけるのか、共働きも多いし、そこの不安もある」
少母化に晩婚化。
そして、男性の結婚意欲の低下によって、止まらない出生数の減少。
この出生数から死亡数を差し引いた人口の減少数は、51万2,000人。
この数は、都道府県で最も人口が少ない鳥取県の人口に匹敵する。
つまり、1年で1つの県が消滅する勢いで、日本の人口が減っている。
40代(子1人)「今よりも確実に人口は少なくなっているわけですよね。
この子たちの世代がどうなっちゃうんだろうなって」
日本の未来はどうなってしまうのか。
天野さん「国のお財布がどんどんどんどん小さくなっていきますので、お父さん、お母さんの世代の老後の社会保障というのは望めません」
社会保障の支え手はいなくなり、年金ももらえるかわからない。
そして、医療費負担も未知数。
さらに、電気・ガス・水道など公共サービスの縮小や、救急車・消防車の有料化。
今は考えられない世界が、もう迫っているという。
60代「難しい時大ですからね、今。子育てするのに。この子たち、大きくなったら大丈夫かな? と感じることはありますね」