日本が国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、商業捕鯨の再開を決定したことを受けて、反捕鯨国を中心に抗議運動が広がっている。英国ではボリス・ジョンソン前外相の「新恋人」と噂される女性が主導したデモが行われ、「捕鯨をやめよ。東京五輪をボイコットせよ」との横断幕が掲げられた。インターネット上では商業捕鯨反対の複数の署名サイトが立ち上がり、世界各国から20万人以上の賛同者を集めたところも。情報戦略の拙さから効果的な反論ができていない日本への風圧は、さらに強まっている。

「国際捕鯨委員会」の画像検索結果

英前外相の「新恋人も」

 

 日本のIWC脱退をめぐっては、海外の主要メディアが批判報道を展開。「日本はクジラの虐殺をやめよ」との社説を掲げた米ニューヨーク・タイムズに対し、日本の外務省は懸念を示す寄稿を発表した。しかし、英語や他の言語による日本側の情報発信力は弱く、猛烈なバッシングの前に、効果的な反論ができていない状況だ。

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 SNS上でも批判の声が渦巻いており、客観的事実に基づかず、虚偽に基づく情報が飛び交っている。捕鯨問題に関連する日本の情報戦略の拙さは、2010年に和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に描いた「ザ・コーヴ」が米アカデミー賞を受賞した際にも露呈しており、今回も同様の状況が起きているといえる。

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 1月26日には、欧州連合(EU)離脱で揺れる英国のロンドン中心部にある日本大使館周辺で、反捕鯨デモが行われた。デモには最近、英タブロイド紙でジョンソン前外相との熱愛が報じられた政治顧問、キャリー・シモンズ氏、さらに、ジョンソン外相の父親、スタンリー氏が一緒に参加し、注目を集めた。

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 ジョンソン氏は昨年末、英紙に「私たちは日本の捕鯨再開計画に憤慨すべきだ」という論評を発表したばかり。参加者は「日本のクジラ虐殺をやめさせよ、日本のクジラへの犯罪を止めさせよ、東京五輪をボイコットせよ」という横断幕を持って中心部を練り歩いた。

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 中には、返り血を浴びたように全身を赤いペイントで塗り、「やめろ」と日本語で書かれたはちまきを頭に巻いて参加する女性も。シモンズ氏は「私たちは東京五輪をボイコットする」とのプラカードを持ちながら、声明を読み上げ、「伝統が商業捕鯨を再開する理由であるはずはない。そうですよね?」と参加者に呼びかけた。

 

 デモの様子について、大衆紙サンは「シモンズ氏は安倍晋三首相に捕鯨を停止するよう促す熱弁をふるい、政治的野心を明らかにした」と報じた。

 

シー・シェパード創設者も署名

 

 英国では、日本の商業捕鯨再開の決定を批判する公開書簡が発表されている。書簡には反捕鯨団体シー・シェパードの創設者、ポール・ワトソン容疑者ら15人以上が署名しているが、映画「ナイト・ミュージアム」などに出演経験がある俳優のリッキー・ジャーベスさん、「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」などに出演経験がある俳優のスティーブン・フライさんら、いわゆる「セレブ」の名前もある。

 

 国際刑事警察機構(ICPO)の国際手配を受けながら米国内に滞在しているワトソン容疑者だが、75万人のフォロワーがいる自身のフェイスブック上で声明を発表したり、地元メディアのインタビューに応じる形で、「日本が今回南極海での調査捕鯨を諦めて近海での捕鯨に切り替えたのは長年抗議活動をしてきたシー・シェパードの貢献によるものだ」と、ここぞとばかりにアピールしている。

 

扇動的なメッセージ

 

 一方、野生動物保護や人権問題を取り上げている「Care2」というオンライン署名サイトでは、「日本で商業捕鯨を復活させるな」というキャンペーンが立ち上がり、1月末時点ですでに24万人以上の賛同者が集まっている。

 

 このキャンペーンには、「捕獲されたクジラはゆっくりと苦しんで死に至る。野蛮で残忍な営みだ。私たちはこの優しい海の巨大動物のために立ちあがり、残忍で非人道的な虐殺を復活させるいかなる試みにも立ち向かわなければならない」とのメッセージが記され、署名に応じるよう呼びかけている。

 

 反捕鯨運動では、人々の感情に訴えかけるような扇動的なメッセージや、赤い血を強調するような派手なパフォーマンスが多用される。日本にとって大切なことは、こうした情緒的な反発に対し、いかに冷静かつ論理的に反論する主張を展開できるかといえる。