30日、沖縄県による辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回処分の効力を一時停止した国土交通相の決定について、行政法の研究者からは厳しい批判の声が上がった。

 

 研究者の有志110人は4日前の26日、「国民の権利利益の救済」を目的とする行政不服審査法を利用して審査を申し立てた国の対応を批判する声明を出したばかり。賛同者の一人、沖縄大の仲地博学長(行政法)は「私人が入れない海域に基地を造ることは国にしかできない行為だ。国が国民と同じ立場にあるという解釈がまかり通れば、法治主義の目的、理念を逸脱する」と懸念を示した。

 

 撤回効力の一時停止を受け、国は早期に工事を再開して土砂投入に踏み切るとみられるが、仲地学長は「工事は進むかもしれないが、国の説明は県民の理解を得られておらず、マグマはたまっていく一方だ。沖縄から法治主義の崩壊が始まる」と警鐘を鳴らした。

 

 一方、国交相は一時停止の要件となる「重大な損害を避けるための緊急の必要」について▽経済的損失▽普天間飛行場周辺の住民が被る事故などの危険性▽日米同盟への悪影響--を挙げた。これに対しても、龍谷大の本多滝夫教授(行政法)は「経済的損失は直ちに回復が困難とは言い難い。基地の危険性は住民の危険性であり、国が主張できる利益ではない」と指摘。「国の主張はお門違いであり、こんな法律論がまかり通っていいのか」と疑問を投げ掛けた。