ロシアは、なぜここまで「横暴」になったのか マケドニアの国名をめぐって(東洋経済オンライン) | みひろのブログ

    「仲間」の国でさえロシアの横暴さは許容できないレベルに達している(写真:ロイター)

     

     バルカン半島の小国マケドニアとギリシャは先日、マケドニアの国名を「北マケドニア共和国」とすることで合意した。しかしロシアがこれをぶち壊そうと裏工作を繰り広げている。

     

     マケドニアでは国名変更の是非を問う国民投票が9月末に予定され、ここで承認されれば、北マケドニア共和国が正式に誕生することになる。ギリシャの北部地域は古くからマケドニアと呼ばれてきたため、両国はマケドニアの呼称をめぐって何十年も対立してきた。

    国際社会の大多数は国名変更を支持したのに

     ギリシャはかつて隣国が「マケドニア共和国」と名乗ったことに反発。同国のNATO(北大西洋条約機構)やEU(欧州連合)への加盟に拒否権を発動した。マケドニアは1993年、国連に加盟する際、「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」という暫定国名を用いなければならなかったほどだ。

     

     このような複雑な経緯を持つ両国は今年6月、国境を接するプレスパ湖で調印式を開き、対立の火種となってきたマケドニアの国名を「北マケドニア共和国」とする合意文書に署名。国際社会の圧倒的大多数もこれを支持した。

     

     だが、ロシアは違った。ギリシャ政府は7月、プレスパ湖で交わされた合意をロシアが転覆しようとしていることを示す「否定できない証拠」をつかんだと発表した。官僚の買収を試みるなど内政干渉を行っているというのだ。

     

     コジアス外相はさらに、合意に対するギリシャ国内の反対運動をロシアが支援していると非難。

     

    ギリシャはロシアの暴挙には屈しない、とたんかを切った。ギリシャはその後、ロシア外交官2人を追放。ロシアは報復措置としてラブロフ外相によるアテネ訪問の予定をキャンセル。モスクワ駐在のギリシャ外交官を追放すると発表した。

     

     ロシアの工作活動はマケドニア側でも確認されている。ロシアはマケドニア内の反政府運動に資金提供し、9月30日の国民投票に向けて暴力行為をたきつけるようロシア寄りの企業に圧力をかけている。ザエフ首相はそう主張した。

     

     ロシアがプレスパ湖での合意を頓挫させようとしているのは、マケドニアがNATOに加わるのを阻止するためだろう。ロシアがNATOの拡大に反対するのは、旧ソ連時代の衛星国が西側の同盟国に転換するのをおそれているためだと説明されることが多い。しかし、マケドニアはワルシャワ条約機構の加盟国だったこともなければ、ロシアの国益を決定的に左右するような国でもない。

    横暴さは許容できないレベルに達した

     一方のギリシャは1952年からNATOに加盟しているが、ロシアのプーチン大統領とは良好な関係を築いてきた。ロシアは今年3月に英国で起きた元スパイ暗殺未遂事件で神経剤を使用したと断定された。これを受けてEUはロシアを非難する声明を出したが、その文言をトーンダウンさせる役割を担ったのがギリシャだった。

     

     それなのにロシアは、仲間のギリシャの国益を傲慢にも踏みにじった。プレスパ湖での合意はギリシャ政府にとってさして重要ではないと、なめてかかったのだろう。

     

     今回の件で明確になったのは、敵国だけでなく、身内であってもロシア政府の横暴は許容できないレベルに達したということだ。ロシア政府は諸外国で裏工作を活発化させてきている。NATO加盟国の領土にまで上がり込んできて、元スパイの暗殺を試みるような国がロシアなのだ。そのロシアは今、ギリシャとマケドニアに干渉し、両国が苦労して勝ち取った合意をぶち壊そうとしている。

     

     このようなロシアの暴挙を前に、ギリシャとマケドニアの指導者はひるむことなく誠実に立ち向かった。問題は、他国の政治家に彼らと同じくらいの根性があるかどうかだ。