鉄道員(イタリア映画)
★★★★★:100点

2月に「大脱走」を観て中学生の頃の興奮と感動が鮮やかに甦った第二回・午前十時の映画祭。今度は「鉄道員」(1956年)を初日の第一回目に観ました!(at TOHOシネマズ梅田)

私が生まれる前に作られたこの作品、やはり中学生の頃にTVの「日曜洋画劇場」(淀川長治さん!)で観て大感動し、我が生涯の洋画ベストテンで数十年もの間ずっとベスト3の一画をキープし続けています。監督&主演のピエトロ・ジェルミ、ルイザ・デラ・ノーチェ、エドアルド・ネヴォラ、シルヴァ・コシナ、サロ・ウルツィ・・・。そして、カルロ・ルスティケリ(音楽)。今でも出演者や作曲者の名前はスラスラ出てきます。この作品を再び映画館のスクリーンで観ることができるとは!

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*************************** あらすじ **************************

(午前十時の映画祭のサイトより)

鉄道機関士のアンドレア(P.ジェルミ)は、厳格な父親であった。長男マルチェロや長女ジュリアはそんな父を敬遠し、幼い末っ子サンドロだけがアンドレアを尊敬し、誇りに感じていた。そんな家族を支えているのは、寛容で慈愛に満ちた母サラ(L.D.ノーチェ)の存在であった。ある日、アンドレアの運転する列車に青年が飛び込み自殺をしてしまう。そのショックで信号無視を犯し、アンドレアは降格。組合も彼には厳しく、彼は酒におぼれ、周囲からも次第に孤立していく……。

(CinemaScapeより)

戦後のイタリア、鉄道の運転士ピエトロ・ジェルミの父を誇りに思う息子サンドロエドアルド・ネボラの目を通し、家族の絆を描く感動作。長女や長男と一途で厳格な父とのわだかまり、意に反したスト破りでの仲間との確執、不幸な事故で酒におぼれ体を壊していく。家族、夫婦、仲間といった庶民の暮らしを切ないメロディとともに描いている。 (kinopさん)

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「大脱走」のときと同様、ギターが主旋律を奏でる憂いを帯びたテーマ曲(映画音楽として名曲中の名曲)が始まると、心はあっという間に少年時代へタイム・スリップ。殆どすべてのシーンを覚えていましたが、感動度合いは昔も今も変わらずでした。まさに名作は死なずです。

【 注)以下、ネタバレあり 】

特急列車の運転士として仕事に誇りを持つ、謹厳ながらも酒と音楽が大好きで快活な父・アンドレア。いつも家族全員のことを思い、悩みも多いけれど、優しくて、みんなから頼りにされる綺麗でしっかりものの妻・サラ。人は良いのだが、仕事もせず毎日ダラダラと過ごして遊んでいる兄・マルチェロ。不本意な妊娠で(?)結婚したものの、決して幸せには暮らしていない美人の姉・ジュリア。そして、父が好きで、母が好きで、年の離れた兄や姉も好きで、可愛らしくて、やんちゃで、機転がきき、ちょっぴり大人びたところもあり、みんなに愛される末っ子のサンドロ。学校の成績を親に見せづらかったりといったシーンも微笑ましかったですが、サンドロを演じるエドアルド・ネヴォラが家族の間をとりもつ天使のようでした。そして、サラは慈愛に満ちた聖母マリアか。この2人が家族を結びつけていましたね。

喜びと悲しみの繰り返しの日々。家族の心の結びつきと離反。中盤以降はなかなか厳しくつらいシーンが続きますが、物語の終盤の木洩れ日が射すようなシーンにピエトロ・ジェルミの心の温かさを感じました。

スト破りとして仲間からも冷たい目で見られ、家にもいづらくなって場末の酒場に入り浸りになる父・アンドレア。「一緒に帰ろう」と迎えにきた息子と共に、勇気を振り絞って居酒屋の仲間の元へ。彼の姿を見た仲間の束の間の沈黙が緊張感をはらむが、新しいワインをあけて迎えようとする酒場の主人が素晴らしく、かつてのようにみんなで賑やかな酒盛りが始まる。胸をうつ良いシーンです。

終盤のクリスマスのシーンが最高です。体を壊し、3人で寂しくクリスマスのテーブルを囲んでいるところに突然戻ってきた長男。抱き合う父と息子。これからもずっと家にいるという。やがて、次々と友人たちがやってきて、酒に音楽にダンスに、これまでになかったほどの賑わいを見せる。久々の幸せに顔がほころぶ父と母。そして、長女からも、別れた元夫と一緒にミサに行った後、家に来るという嬉しい電話がかかってくる。このあたりは分かっていても泣けます。

皆が帰った後、心地よいほろ酔い気分の中でベッドに寝転んでギターをつまびくアンドレア。もうすぐやってくる娘夫婦を待ちながら。台所で片づけものをしながらその音色に耳を傾けている妻。やがて、ギターの音色がやんで・・・・。

悲しみの中に明るさが同居したラストも秀逸。サントラ版では音楽と共にこのラストシーンの2つの台詞も入っていました。音楽のカルロ・ルスティケリは「鉄道員」以外にも「刑事」「ブーベの恋人」「誘惑されて捨てられて」などの有名な曲を書いており、私はカルロ・ルスティケリとニーノ・ロータ(「道」「ロミオとジュリエット」、後年では「ゴッドファーザー」などが有名)の映画音楽のレコードを所有していました。今も実家に残っています。

この映画は庶民の暮らしと家族や仲間の絆を描いており、名匠ピエトロ・ジェルミ版「家族の肖像」と言ってよいのかもしれません。貧しくとも心の結びつきが強い家族の姿など、戦後10年くらい経った頃のイタリア映画には日本映画と似たような空気があります。家族や友の素晴らしさ、ありがたさ。古くからの友人を演じるサロ・ウルツィも名演でした。初見以後、やはりTV放映されたものを1,2回見たと思いますが、この年齢になって再見すると、登場人物の全ての立場で見たり考えたりして感慨深いものがありました。そして、この映画はやはり今後も生涯のベスト3から外れることはないと確信しました。ただ、主人公アンドレアの年齢にビックリ。今の私より年下の設定だったとは!

やはりヨーロッパの国々の建物は美しく風情がありますね。アンドレアの住まいは庶民が住む安アパートなのでしょうが、背の高いドアやインテリアなどに味わいがありました。また、イタリアが歌好きの国(クラシック、カンツオーネ)、サッカー好きの国ということも再認識しました。

約2時間の映画で、第1幕と第2幕に分かれていたことを今回、初めて知りました。上映そのものは休憩なしで連続でしたけれど。入場者は年配の人ばかりかなと予想していたら、確かに多かったものの、若い方の姿もチラホラ見えて嬉しく感じました。題材が古かろうが、モノクロであろうが、素晴らしい映画はいつの時代でも人の心を打つのだと思います。

さて、とにかく素晴らしい午前十時の映画祭、次は何を見に行こうかな?