ブラバン(新潮文庫)
★★★☆:70点
書名から吹奏楽部を舞台にした青春時代まっただ中を描いた作品と予想していたら、違いました。参考にさせて頂いたエビノートさんも同様なことを書いておられましたね。
楽しさや懐かしさと共に切なさとほろ苦さのある青春小説と言えるでしょうか。
******* 内容(「BOOK」データベースより) *******
<単行本>
大麻を隠し持って来日したポール・マッカートニーが一曲も演奏することなく母国に送還され、ビル・エヴァンスがジョン・ボーナムがジョン・レノンまでも死んでしまった、1980年(昭和55年)。醒めた熱狂の季節に、音楽にイカれバンドに入れあげるボーイズ&ガールズが織り成す、青春グラフィティ。クラシックの、ジャズの、ロックの名曲にのせ、総勢三十四名のメンバーたちが繰り広げる、大群像劇。四半世紀の時を経て僕らは再結成に向かう。吹奏楽部を舞台にしたほろ苦い「青春」小説。
<文庫本>
一九八〇年、吹奏楽部に入った僕は、管楽器の群れの中でコントラバスを弾きはじめた。ともに曲をつくり上げる喜びを味わった。忘れられない男女がそこにいた。高校を卒業し、それぞれの道を歩んでゆくうち、いつしか四半世紀が経過していた―。ある日、再結成の話が持ち上がる。かつての仲間たちから、何人が集まってくれるのだろうか。ほろ苦く温かく奏でられる、永遠の青春組曲。
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約30名の登場人物には高校時代に様々な出来事や思い出があり、その後の人生でも各人それぞれに浮き沈みのある波乱に満ちた物語がある。まさに人生いろいろ~♪ 男もいろいろ~♪ 女だっていろいろ~♪です。高校時代から25年経ったアラフォー世代の回想といったスタイルがなかなか効果的でした。
のだめの映画版をクラシック音楽ファンがより楽しめるように、吹奏楽をやっていた人や洋楽(クラシック、ポップス、ロック、ジャズなど)に興味のある人/あった人は蘊蓄なども含めて細部まで楽しめたのでしょうね。私はクラシック音楽については多少分かりましたが、それ以外の当時のポップス、ロック、ジャズなどについては曲名や人名を殆ど知らず、楽器も全く弾けないので、それがちょっと残念でした。また、高校時代にクラブ活動をしたかどうかで思い出の数やエピソードの多さは全然違うのでしょうね。私自身は高校生活は楽しかったものの、クラブ活動をしなかったので、この小説のような思い出はあまりないなあなどとも感じました。体育大会や文化祭は学校中でかなり盛り上がりましたけどね。ただ、大学時代は山歩きのサークルで合宿やキャンプに何度も参加しましたし、みんなで何かをやろうとする吹奏楽部の雰囲気なども理解できたと思います。それにしても音楽っていいなあ。
主たる登場人物は語り手である他片等(弦バス担当)を中心として10名くらいかと思いますが、約30名を描き分けるのさすがに難しく、登場人物一覧があったものの、読み手にとっては誰が誰やら分からなくなるのがちょっと惜しかったと思います。青春群像ではあっても、もう少し整理してというか、人物を絞り込んで描いて欲しかったという気もします。広島弁は印象的でした。ただ、上級生の男子がしゃべると、往年の東映任侠映画を思わせる雰囲気があって笑えました。
トラック運転手をしていて右腕を失った辻(テナーサックス)。金銭トラブル続きだった元・彼女の三浦加奈子(バリトンサックス)。25年後に互いに相手のことを気にかけながらも、現在の自分の状況と考え合わせて、間を取り持つような形になった他片も含めて言いたいことを言えない、聞きたいことを聞けないもどかしさが最も印象的。
飲んだくれになった元顧問の安野先生、老年の現顧問・岸岡先生も味わい深く、ギター購入のために借金を申し込んだ他片に両親が高価なギターを買ってくれる(もちろん買い与えるのではないが)シーンも良かったです。
◎参考ブログ
エビノートさんの”まったり読書日記”