久々の淺田次郎作品です。建築探訪でしょっちゅう出歩いている中でも本は次から次へと読んではいるのですが、感想そのものも久しぶりとなりました。
さて、本書です。最初は天国に行く前という設定や雰囲気的に”うーん、どうかな・・・”とも思っていたのですが、最終的には良かった!です。生前には分からなかった・知らなかった秘密が次第に明らかになってきたりもするのですが、感謝やお礼の言葉を言えなかった人への想いが実に切なかった。。。
死んだ人やそれらを題材にした物語(「鉄道員」「地下鉄に乗って」など)を書かせたら抜群の淺田次郎さんですが、やはり実にうまく味わいがありました。重松清の「流星ワゴン」ともちょっと似た感じだと思いましたが、こちらの方がより軽みやユーモア感があります。
【注:以下、ネタバレあり】
生前とは似ても似つかぬ人物となって7日間(実質はたったの3日)だけ元の世界へ戻る設定が絶妙でした。デパート勤務の課長・椿山和昭→美人のキャリア・ウーマン(スタイリスト)和山椿、テキヤの親分・武田勇→弁護士風の紳士、不運な交通事故で死んだ良家の男の子・根岸雄太→美しく可愛らしい女の子・蓮子ちゃん。それぞれの家族が実は元々関係があったり、3日の間に知り合ったり・・・はよくある設定でしょうが、淺田さんはその描き方が絶妙で、物語に深い余韻を与えていたと思います。椿山の息子・陽介もいい子でした。
椿山の父親。正論を堂々と述べて、約束を破ってしまい地獄に墜ちる運命となる少年に替わって地獄行きのエスカレータに乗る。とにかく人を助けようとするその生き方&死にざまの立派さ!その父親となら地獄行きも怖くないと言う武田。彼も信念を持って確信犯的に約束を破り、地獄行きを決める。愛する人や子供を救おう、守ろうとする男気。これには涙。
椿山と同期入社の女性・佐伯知子。精一杯みえと虚勢を張ってしまい・・・一途だけれども不器用な愛も切なかったです。今まで誰にも言えなかった本当の想いを椿だけに話すシーンは秀逸でした。
この本で唯一疑問が残ったのが、ラストのラストに、なぜ”ニセ・伝説のヒットマン”五郎を持ってきたのかということです。これは妻も同感だと言ってました。五郎と父親のエピソードは内容的に悪くはないのですが、何故これをラストのラストにしたのかなあ。。。
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激務がたたり脳溢血で突然死したデパートの中年課長が、たった7日間の期限つきで現世に舞い戻ってくる。ただしみずからの正体を明かすことは許されず、39歳の独身美女の姿を借りているため、行く先々で珍騒動が巻き起こる。家族に、仕事に、やり残したことをやり遂げ、主人公は無事成仏できるのか。行動をともにするやくざの組長と小学生のストーリーをからめつつ描かれる、ハートウォーミングな「死者の自分探し」の物語である。
もともと新聞連載小説だけに、随所に泣き笑いのつぼが設定されており、著者独特の歯切れのいい文体ともあいまってたちまち引き込まれる。脇役の一人ひとりまで丁寧にキャラクター設定された「優しい人」「いい人」たちによるファンタジーは、まさに浅田節の真骨頂だ。おまけに中年の純情恋愛までが織り込まれ、山あり谷ありで読者を飽きさせない。やや意外なラストシーンはほろ苦くも温かい味わいを残す。
美しい女性の肢体をわがものにした主人公の行動のおかしみ、間抜けな死に方をしたやくざのべらんめえ口調の説教節など、著者ならではのディテール描写、懐かしくも美しい日本語の世界などは、本筋をはなれても楽しめる。死をめぐり、家族間、世代間で感想を述べ合うきっかけとしても好適のエンターテイメントといえよう。(松田尚之)
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◎参考ブログ ※いつも参考にさせて頂いているお三方ですが、
評価・感想は様々なようです。
苗坊さんの”苗坊の読書日記”
そらさんの”日だまりで読書”
エビノートさんの”まったり読書日記”
