先週の土曜日は「関西 洋風建築めぐり」講座の今期(上半期)初の見学会でした。私がこの講座に参加したのは半年前からなのですが、継続申し込みをされた方が多かったようで、この日も盛況でした。ところが、この日は神戸線のダイヤが乱れていたこともあって(?)、JR・大阪駅から福知山線(宝塚線)に乗ったつもりが西明石行きに乗り間違い。いきなりの遅刻で集合時間に間に合わず焦りましたが、現地で何とか追いついてリカバリーしました。

この日の見学先はJR猪名寺駅から徒歩10分の距離にある「東リ株式会社 本社工場」です。旧本館事務所(大正9年竣工)はハーフチンバー風で下見板張りの美しい姿を敷地外からも眺めることができるのですが、今までこの建物のことを聞いたことがなく、本などで紹介されていた記憶もありません。しかし、設計は「綿業会館」などで有名な名手・渡辺節であり、前面が広くとられた開放的な場所に佇む端正ながらも優美な姿が絵になります。私は知らなかったのですが、この建物は地域ではシンボル的な存在のようですね。

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ぷにょさんのブログ”まちかど逍遥”にも詳しい報告があり、内容はかなりかぶりますがご容赦ください。
事務棟の内部はかなり手が入っているようでしたが、一階には柱頭飾りがついた木製の柱があり、天井と壁の接する部分には大きなカーブが施されているなど、往時を偲ばせます。
工場棟が竣工した当時の鳥瞰図や写真も飾られており、その当時の姿を伝えるこれらの資料は大変貴重かつ素晴らしいです。また、大学の先生が小屋裏を調査されたときに見つかった棟札も見せて頂くことができました。設計:渡辺節、請負:鴻池忠三郎といった文字も読めます。これまた素晴らしい!

正門の位置が変わった際に事務所も建物の向きが変更されたそうです。昔の写真や絵
などを見たところ、横方向の移動はそれほど無かった模様ですが、やはり動かす(曳き家する)のは大変だったでしょうね。

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同様に掲示されていた図面のコピーを見ると、事務所には浴室もあり、そこには五右衛門風呂とおぼしき釜が描かれていました。むかーし、幼い頃、祖母の家には五右衛門風呂があり、板をそーっと沈めて切り欠き部を釜の突起部に合わせて入ったり、焚き口に木や紙をくべたことなどを思い出しました。これは貴重な思い出です。

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2階にはリノリウム関係の資料が多数並べられていました。現在ではリノリウム製品そのものは生産されていないとのでしたが、これらも貴重な文化資料・産業資料です。また、隣の小部屋は、建物の構造を調べるために天井・床・壁の一部がはがされた状態がそのまま残っていました。これらも貴重ですね。引率の先生が内外壁の間に”もみがら”などの断熱材が入っていたか尋ねられましたが、それは無かったそうです。

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その後、工場敷地内をぐるりと回り、旧乾燥室などを見学しました。ここは高さ15mくらいの吹き抜けの大空間になっており、なかなか壮観です。製造工程資料などを見ると、乾燥=酸化熟成の処理だったようです。外観的に昔からの状態で残っているのは一部だけのようでしたが、屋上部分にはかつて外灯が点っていたらしい場所もありました。

私が他に気に入ったのは、鉄工室の看板がかけられていた小さな建物です。質実剛健といった趣のがっしりした建物でしたが、窓は大きく、たっぷりと光が入りそうなのが印象的でした。

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「東リ」さんは創建当時からある建物を大切に残し、その建築的価値を調査で裏付け、更には資料館として活用しようとされているそうで、その姿勢がとても好ましいです。工場建築でも素晴らしいものは幾つかあるのですが、一般の人が目にする機会は少なく、このような場を設けて頂いて本当に素晴らしかったです。「東リ」さんにはこれからもずっと活用し続けて頂きたいと思いました。

この日は朝早くから千里山西の住宅街を再訪し、午後からはこの見学会。さらにこの後、稲野・塚口のまち歩きを敢行し、夕方にはヘトヘトになりました。しかし、最後の最後にとびっきりの住宅を発見!これについてはまた別の記事でアップします。