Hokusin1 映画「北辰斜にさすところ」
★★★★☆:80~85点

新聞で評をチラッと見て良さそうと判断。旧制高校の中でもナンバースクールと呼ばれた8校の内の2校である五高(現・熊本大学)と七高(現・鹿児島大学)を描いた素晴らしい映画でした。 

人によっては、古き良き時代を必要以上に懐かしむノスタルジーオンリーの映画と感じる人もいるかもしれませんが、決してそれだけではありません。その当時の純粋な青春群像と言えますし、いたずらに声高になることなく、明るさも備えた反戦映画とも言えます。私としては前者の比重が大きいと思いました。但し、青春群像・青春物語と言っても彼らは当時の超エリートですが。

************* <ストーリー> CinemaScapeより *************

旧制第七高等学校(現鹿児島大学)の野球部創立百周年を記念して、創立当初からの因縁のライバル旧制五高(現熊本大学)との対抗試合が人吉町の球場で開催されることに決まった。同窓会事務局は人吉町出身の天才投手と唄われた、昭和11年入学の上田勝弥(三國連太郎)に是非出席をと頼み込む。しかし彼は「行かない」と言うのみであった。七高から九州帝大医学部へすすみ、軍医として従軍した上田は復員後、鹿児島の地を踏むことはなかったのだ。。。同郷の先輩・草野(緒形直人)にあこがれ、共に寮で過した七高時代を孫に語る上田だが、誰にも言えない悔恨と慙愧があった。

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かつての天才エース・上田を演じた三國連太郎、上田の同郷の先輩・草野を演じた緒形直人の二人が特に素晴らしかったです。上田は老齢になっても現役の医師として頑張っており、単に過去を懐かしがるだけの人物ではなかった。戦場でつらい経験をした彼は、前夜祭でみんなと一緒に踊っていても何となく浮かない顔をしている。その気持ちもよく分かりました。三國連太郎が語るシーンでは、指揮者の故・朝比奈隆さん(東京高等学校→京都帝国大学)を思い出しました。朝比奈さんも学生時代は音楽とサッカーに情熱を捧げた方です。 

緒形直人はボサボサの長髪でバンカラな寮長を熱演。ストームで大太鼓の上に立ち、巻頭言を叫ぶ姿が凛々しかったです。40歳なのに高校生の役が似合っていましたね。最初、緒形直人に似ているけれど別人かと思ってしまいました。坂上二郎のやや聞き取りにくい鹿児島弁も妙に印象的でした。また、東京七高会事務局長役の神山繁も元気な爺さんを怪演していました。生徒達を愛し、人生を語り、自宅で一緒にすき焼きをつつく教授役の河原崎健三も実にいい味わい。今の先生に多少なりともこういう余裕があればねえ。

映画の最後にある五高(熊本大学)vs七高(鹿児島大学)の現役野球部員による試合。ここで「フィールド・オブ・ドリームス」を彷彿とさせる夢のような味わい深いシーンが出てきます。リリーフ投手としてラインをまたいだ選手は・・・。このような描き方は日本映画にしてはちょっと珍しいかもしれません。このシーンについては賛否両論あるようですが、自分が果たせなかった夢の実現、個人的にはOKです。不覚にもここでジーンときてしまいましたから。試合のシーンそのものはもう少し迫力があっても良かったかなとも思いましたが、熊本大学と鹿児島大学の試合は案外こんな雰囲気なのかもしれませんね。

北杜夫の隠れた名作「どくとるマンボウ青春記」等で旧制高校や寮生活の雰囲気を知っていたので、破天荒にして勤勉かつ純情、何事にも情熱を持って必死に取り組んだ昔の高校生気質はよく理解できました。”生涯の友”を得るという意味からも、このような学生生活も悪くはないし、一生の内にこのような数年間があっても良いと思います。私の母校も旧制高校の流れを汲む学校だったのですが(notナンバースクール)、サークルで山歩きをしていた当時の愛唱歌に「全寮歌」があり、それにもこの映画に出てきたような巻頭言があって非常に懐かしかったです。今でも同窓会をやれば全員で(男も女も)肩を組んでこの歌を大声で歌いますからね。同じ釜の飯ならぬ同じ飯ごうの飯を食った仲間は先輩・後輩を含めて”生涯の友”です。

映画のラストで流れた歌で”ドンドコドン、ドンドコドン”というフレーズが印象的でした。当日の劇場にはやはり年配の方が多かったですが、30代くらいの男性もチラホラ見かけました。理解されるかどうかはともかく多くの人に見て欲しい映画でした。

◎参考ブログ:

   ”私の歳月”
   blog350623さん(?)の”あらけ農園便り”
   出崎敦史さんの”なにわスポーツジャーナル”
   嫁よめさんの”嫁よめYOME日記”
   milk_road5さんの”Love&Peace、感じたことを。”
   
cazpisさんの”おかだ屋のテキスト”
   大津留公彦さんの”大津留公彦のブログ2”