Tokuobando1 東京バンドワゴン(集英社)
★★★★☆’:85点

久々に本の感想です。
下町の古書店兼喫茶店「東京バンドワゴン」。ここを舞台に繰り広げられる人情話&大家族ホームドラマといった感じの物語でした。そこに日常生活でのささやかな秘密や謎、不思議な出来事がからめられているのが特徴です。2年前に亡くなり、空の上から堀田家を見守っている大祖母・サチの語りでの進行がユニークで微笑ましい。それ故に俯瞰撮影的な趣もあります。彼女と会話できるのは、どうやら孫の紺と曾孫の研人だけのようなのも面白かったです。

近所つきあいが盛んで互いの家をしょっちゅう行き来する人々。中には家族同然のような人も。悪人は登場せず、時々クスッと吹き出したり、ニヤリと笑いながら安心して読んでいられる健康的な小説です。せちがらい最近の世の中ですが、たまにはこういった世界に浸るのも良いものです。しかし、マンション住まいではこのようなコミュニケーションは絶対に成立しないでしょうね。濃密な付き合いは疲れることもあるでしょうが、こういう世界にも憧れるなあ。。。

画家で、美人だけれど未婚の母(娘は花陽)・藍子、元・スチュワーデスで活動的なお嫁さん・亜美さん、明るく元気で働き者のお嫁さん志願・牧原みすずさんなど、女性陣がいい感じです。

  「いいね、若い女の子(みすず)が家に居るっていうのは」
  「まったくだなおい」
  「若くなくてすみません」(亜美さん:34歳)
  「若過ぎてすみません」(花陽:12歳)

ここ、笑えました。

【以下、注意:ネタバレあり】

秘密や謎は・・・単行本ブックカバーより

  文明開化に関する些事諸問題なら、如何なる事でも万事解決

   「春」百科事典はなぜ消える
      朝あらわれて、夕方消える百科事典。どうやら近所の小学
      1年生の女の子の仕業らしいが?
   「夏」お嫁さんはなぜ泣くの
      猫の首輪に結ばれていた、切り取られた文庫本の数ページ
      それが意味するものは?
   「秋」犬とネズミとブローチと
      自殺した女流作家の古本を持って老人ホームから失踪した
      おばあちゃん。その本には何が書かれていた?
   「冬」愛こそすべて
      <冬に結婚するべからず>という堀田家の家訓が新たに
      見つかった。そこに潜む思惑とは?

どれも家族や人を丁寧に描いていて、しみじみかつ味わい深かったのですが、

”紺”が水禰(みずね)さんという近々廃業する旅館の主人に頼まれて値付けした古書の山。ところが翌朝、その本が主人と共に忽然と消えてしまった・・・。これは一体全体どういうことか?皆、首をかしげるばかりだが。。。
この謎&謎解きも面白かったです。

ラスト近くの”青”と”みすず”こと”すずみ”さんの結婚式は感動的でした。有名女優の池沢百合枝さんが映画ロケということで急きょ特別に式に列席させてほしいとのことで・・・。祖父・勘一の心遣いにホロリ。「おい、藍子、どうせなら美人を一番前にしろよ。我南人の隣に池沢さんに座ってもらえ。その方が華があっていいってもんだ」
藍子が肩を竦めながら笑って席を立ちました。
「華がなくてすいません」

伝説のロッカー・我南人。大変ユニークな存在なのですが、やたら”LOVE”を口にすることと、「~なのぉ?」「~なんだねぇ」といった感じの独特の口調がもうひとつピンとこなかったです。まあ、これはある程度、実在人物のパロディかとも思いますし、私がロック魂たるものを知らないせいかもしれませんが。

※表紙画に古書店と喫茶店がややマンガチックに描かれているのですが、
  これが良い味わいを醸し出しています。
  近代建築ファンはこういうところも見るのです。

**************************Amazonより**************************

内容(「BOOK」データベースより)
明治から続く下町古書店“東京バンドワゴン”ちょっとおかしな四世代ワケあり大家族のラブ&ピース小説。

内容(「MARC」データベースより)
下町の老舗古書店「東京バンドワゴン」。ちょっと風変わりな四世代の大家族が、転がりこんでくる事件を解決する。おかしくて、時に切なく優しい、下町情緒あふれる春夏秋冬の物語。