伊坂幸太郎さんの作品を読んだのは初めてでした。
世評では失敗作と言われたり、この作品では直木賞は獲れないといったような書かれ方が多かったと思いますが、読み終えてみるとなかなか面白かったです。
クラブやサークルには入らず、そこそこ一生懸命勉強し、学業に差し支えない程度にバイトし、時々合コンして酒を飲み、麻雀卓を囲む国立大学の学生男女5人組(北村、鳥井、西嶋、南、東堂)。
最初は、他愛のないつまらない会話が続くなあと思っていましたが、5人の性格や考え方などが次第に鮮明になり、各々の存在感が出てきたあたりから面白くなりました。
とある大きな事件が起こり、みんな傷つき、悩み、やがてまた元気になって人間として成長していく姿が丁寧に描かれ、私の採点も55点→60点→70点→75点と、次第にアップしていきました。
とくに、自分の一風変わった主義主張に熱心で他人と合わせたりすることに汲々したりしない信念&孤高の人(? と書くとカッコイイのですが、通常は”変わったヤツ”と思われてしまう)西嶋と滅多に笑わない美女・東堂のカップルが非常に印象的。後半の彼らの会話・行動が得点アップに大きく寄与しました。娘とは違ってとても明るい東堂の母も面白い。自信なさげな南の超能力も very good.南の想いになかなか気付かなかった鳥井のおかしさ。その鳥井が受けた衝撃・悲しみとそこからのカムバック----優しく支えた南たちの存在。いい味わいでした。
最初、春夏秋冬で1年間の物語なんだなと思って読んでいたら、4年間の話だったんですね。どうりで将来に対する不安などの会話も多かったし、寂寥感もあったはずです。
この本で言いたいことは、終盤に出てくる以下の会話・シーンかな?
東堂
「うん、西嶋も言ってた。北村と北村の彼女が選んでくれたんですよって、
ずっと言ってた。友達に選んでもらったんですから、って。誇らしげだった」
「俺は恵まれないことには慣れてますけどね。大学に入って、友達に
恵まれましたよって、西嶋はずっと言ってた」
卒業式での学長の言葉
「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」
これは、サン=テグジュペリの本に出てくる言葉らしいですが、重みが
ありました。
このテーマ自体は珍しいものでも何でもありませんが、彼ら5人(+鳩麦さん)によってそれが生き生きと、また時にはしんみりとよく描かれていたと思います。一見平凡だけれども鮮やかな青春群像だと思いました。
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内容(「BOOK」データベースより)
「大学の一年間なんてあっという間だ」入学、一人暮らし、新しい友人、麻雀、合コン…。学生生活を楽しむ五人の大学生が、社会という“砂漠”に囲まれた“オアシス”で超能力に遭遇し、不穏な犯罪者に翻弄され、まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく。パワーみなぎる、誰も知らない青春小説。
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参考ブログ:
ざれこさんの”本を読む女。改訂版”
そらさんの”日だまりで読書”
