日本を代表するクライマー・山野井泰史、妙子夫妻が二人でヒマラヤの高峰・ギャチュンカンに挑んだときの壮絶な登山を描いた衝撃作。
ギャチュンカン登山は遭難ではないのだが(この2人だからこそ遭難にならずにすんだともいえる)、まあ2人共よくぞ生きて帰ってきたものである。特に、妙子は殆ど食事も水分もとらず(体調が悪くてとれず)が続いた中での登山だったのだが、強靱な生命力、楽天的で前向きな考え方が驚異的。これは、母性のなせるわざか?
夫婦が互いを信頼しあいながらも、最後、自分が進むべきか戻るべきかは自分自身で判断しなければならない。当たり前のようだが、実はこれが凄いこと。また、それができなければ生きて戻れないのも真実。
超難度の氷壁、ビバークに次ぐビバークで疲労困憊の体と心、凍傷の恐怖、これらの描写はなかなか凄かった。寒さの恐怖を描いた作品では、かつて読んだ新田次郎の「八甲田山死の彷徨」や冒険小説の名作「高い砦」も凄かったのだが。
しかし、山岳ものとして(一応本作は小説ではなくノンフィクションの部類に入るのだろうか?)、山や登山の奥深さ・素晴らしさを描くといった点において、新田次郎の著作に比べるとやや深みや味わいに乏しいと感じた。沢木耕太郎の狙いはそういったところには無かったのかもしれないが、私としてはその分、5点マイナス。Amazonのレビューの中にもあったのだが、小説のようなノンフィクションのようなあいまいなスタイルは、捉え方によっては”弱み”といえるかもしれない。
実は本書を読むまで山野井夫妻のことは殆ど知らなかったのだが、登山の実力があるだけではなく人間的魅力にもあふれているようだ。登山家にはピュアだけれど強烈な個性の持ち主とか、他人を受けいれない人物などちょっと変わった人が多いようなのだけれど。
本書の読了の直後、6/11のTV「情熱大陸」で山野井夫妻を見た。泰史は細身&ひょうひょうとした感じで山男らしくないのが面白かった。妙子の凍傷の指の映像が出てきたのにはビックリ!これは衝撃的映像でした。うわー、あんあことになるのか・・・。しかし、二人ともスケールの大きい並はずれた人物である。酸素欠乏で視力も落ち、岩肌のクラックを手さぐりで探すためにやむなく手袋を外すが、(最悪)切り取られることになっても仕方のない指はどれかなと冷静に考えたりするところが凄かった。
書名の「凍(とう)」、異色の名称だが本書の内容をよく表している。ラストに山野井のカムバック登頂の記述があり、感服。TVでも不屈の闘志がよく描かれていた。
************** Amazonより **************
出版社 / 著者からの内容紹介
世界最強のクライマー・山野井夫妻を襲った「一瞬の魔」。しばしの逡巡の後、宙吊りになった妻の頭上で迫られた究極の決断とは。『檀』以来十年ぶりとなる、待望久しい最新ノンフィクション長編。
内容(「BOOK」データベースより)
極限のクライミングを描く、究極の筆致。『檀』から十年、最新長編作品。最強の呼び声高いクライマー・山野井夫妻が挑んだ、ヒマラヤの高峰・ギャチュンカン。雪崩による「一瞬の魔」は、美しい氷壁を死の壁に変えた。宙吊りになった妻の頭上で、生きて帰るために迫られた後戻りできない選択とは―。フィクション・ノンフィクションの枠を超え、圧倒的存在感で屹立する、ある登山の物語。
****************************************
参考ブログ:
bebeさんの”建築日和ブログ”
ハッチのライブラリーⅡ
読書日記byココログJOEL
W杯ですっかりブログ更新のペースが狂ってしまいましたが、”一応”ずっと読書は続けているのでボチボチと感想を書いていきます。
