Kokkano1 国家の品格(新潮新書)
★★★★~★★★★☆’:80~85点

最近、あちこちでお顔を拝見する数学者・藤原正彦氏の大ベストセラー。しかし、200万部を超えるとは!世間での評価は見事なまでに絶賛と酷評に分かれているようですが、私は非常に興味深く読みました。

これまでに読んだ著者の数学エッセイの中でも本書で述べられた内容の一部が書かれていましたが、こうしてまとめて1冊になると著者の言いたいことがよく分かります。

著者の意見はかなり極端なのですが、これだけ極端だとかえって理解しやすいのが良いですね。また、この人はどこで意見を述べてもブレがないのは大したものです。自分なりの”信念”がしっかりしていると言えます。中曽根康弘氏もTV番組の中で「信念がおありだから」と話されていました。多少、皮肉混じりだったかな?私なぞ周りの意見にすぐ左右されちゃいますが。

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出版社/著者からの内容紹介)
日本は世界で唯一の「情緒と形の文明」である。国際化という名のアメリカ化に踊らされてきた日本人は、この誇るべき「国柄」を長らく忘れてきた。「論理」と「合理性」頼みの「改革」では、社会の荒廃を食い止めることはできない。いま日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神であり、「国家の品格」を取り戻すことである。すべての日本人に誇りと自信を与える画期的日本論。

第1章 近代的合理精神の限界
第2章 「論理」だけでは世界が破綻する
第3章 自由、平等、民主主義を疑う
第4章 「情緒」と「形」の国、日本
第5章 「武士道精神」の復活を
第6章 なぜ「情緒と形」が大事なのか
第7章 国家の品格

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日本人の美的感覚は恵まれた自然環境のためもあり、世界でも類まれなものであるということ。それらから生まれてきた文学・数学の素晴らしさ。理屈など抜きで、「卑怯なことはしてはいけない」という考え方。それを子供にきちんと教えることの大切さ。庶民から尊敬されていた江戸の武士が、権力と教養はほぼ独占していたものの、まるっきり金がなかったということ(not金銭至上主義)などなど、なるほどなあと思いました。

国語(日本語)の力(単に読み書きの力というだけではなく、考え方の基礎となるもの)がきちんとついていないのに英語を喋れるようになっても、海外では人間としての底の浅さがすぐに露見し、馬鹿にされるだけという意見にも、うーむそういえばそうなんやろなあと納得。まあ、喋れない人間にとっては多少負け惜しみ的ではありますが。英語を喋れるにこしたことはないでしょうが、確かに国語をおろそかにしてまで英語を勉強させる必要はないでしょうね。習熟のスピードが早くて余裕のある子が英語を早めに学ぶのは構わないと思いますけれど。

旧制高校・大学のようなエリートの育成についても書かれていますが、これについての評価は微妙ですね。エリートが真の総合判断力と滅私の考え方を持っていれば大丈夫なのでしょうが。それを支えるのが「情緒」、「形」、 「武士道精神」となるのが著者の主張。

ある分野に特異な才能を持つ子について飛び級などで能力を伸ばしてやることは賛成です。それが数学やコンピュータ、あるいは文学といった学術的なものだけでなく、スポーツでも芸術でも何でも構わないと思います。漫画なんかもいいのでは?現在の教育も一応それらをうたってはいますが、不十分ですね。

自分にとって良いとこ取りをすると、芸術や文化、自然に触れることやこれらを愛することは人格づくりにつながること、読書の重要性などについて書かれていたことは非常に嬉しく感じました。この点に関しては自分は間違っていなかったな。自信にもなります。

この本をどう評価するかは、読み手の価値観やこれまでの生き方に大きく左右されると思います。従って意見が大きく分かれるのは当然です。でも、異なった意見の人を許容する心の広さが肝心だし、本書が日本人の心に一石を投じたことは間違いなし!ただ、武士道とかの考え方が宗教や民族の違いを越えて世界で理解されるのは難しいやろなあ。「独立不羈(ふき)」、日本が孤高の国になることも覚悟の上でそれを貫き通せるかです。

この本を読んでいて、ふと思い出したのが、かつて武村正義氏が主張されていた『小さくともキラリと光る国・日本』。それとも相通じるものがあるのでしょうか。