
鎖(新潮文庫)★★★★’:75点
私も叫ぶ 「ほしのーーーーーーーーっ!!!!!!!」
前作「凍える牙」のときは、読後に「はやてーーーーーーーーーっ!!!!!!!」と叫んだのですが、今回は上記の叫び声の後に、「てめぇー!よくもうちの”おっちゃん”を!」と続きます。
良くも悪くも”お子ちゃま刑事”星野が出色の出来。
作品の出来としては「凍える牙」をはるかに上位に置きます。
疾風と星野では勝負になりませんしね。
***************** 以下、ネタバレあり ********************
今回も殺人事件そのものの底が浅く、犯人の描き方も甘いのはモノ足りず。男3人が各々タイ・ブラジル・ロスで人生をやり直すつもりだったと話すのですが、甘い!甘すぎる。犯人グループでリアリティがあったのは、人生に疲れて自ら生きることをあきらめたような加恵子のみでした。彼女と貴子の極限状態での心のつながりが胸をうつ。
監禁シーンもちょっと長すぎました。貴子の苦しみ・恐怖・絶望感などはよく分かるのですが、もう少し話あるいは描き方に起伏がないと読んでいてしんどいのみでした。貴子と共にこちらまでグッタリ。
良い味を出していたのは、ベテラン主任刑事・柳沼。
完璧に泥沼にはまってしまった捜査。守島キャップは柳沼にあえて恥をかかせて捜査陣にハッパをかける。授業中に指された子供のように立たされ、うなだれて叱責に耐える柳沼。しかし彼はその後、事件が大きく動きだすカギを見つけ出すのだった。ベテラン刑事の意地と執念の仕事ぶり。そんな柳沼を畏敬と憧れを持って見つめる貴子。彼女もいい線をいっていたのだが・・・。
----冷蔵庫の中にあったとあるものから事件の背景をつかむ。ここは見事でした。
もう一人印象的だったのが超脇役とでも言うべき東丸。
滝沢たちが人の入り込める場所を見つけるたびに”内偵”が入る。これはいったい誰がどのようなことをするのかな?と思っていたら・・・。東丸主任、そういうことですか。いやー、命がけの仕事、お見事。
貴子と周囲の刑事たちとの関係の描き方は良かったです。星野の存在がそれを際だたせていました。
(滝沢)
あいつは、ここでは十分に受け容れられているということだ。
それは、八十田だけでなく、他の連中の表情を見てもよく分かった。
「助けてやって下さい。お願いします」係長たちも一斉に立ち上がって、
こちらに頭を下げる。
滝沢は、彼らの一人一人も見て「おっちゃんをね」と答えた。
「全力を尽くします」
(貴子)
-でも、皆には分かっている。
貴子は誤解されていない。
それが分かっただけでも、胸が震えるほど、嬉しかった。
これらのシーンは非常に良かったです。
滝沢についても書き出せばキリがないのですが、
畜生。やっぱり俺が行けば良かった。
だが、やはり、どう考えても柄ではない。
このシーンで代表させてしまいます。何のこっちゃ分かりませんね。