凍える牙(新潮社)★★★★☆’:85点
私も叫ぶ 「はやてーーーーーーーっ!!!!!!!!」
強烈な存在感。威厳。気品。知性。気高さとも感じられる雰囲気。
それにしても射すくめられるような目だ。
誇りの高さ、嘘や裏切りを許さない厳しさ、そして、孤独感。
あまりにも静かな、遠い眼差し。
冒険小説などには凄いやつがたくさん出てくるが、これほどのやつはいなかったか。
こんなにも凄いやつなのに、ひたすら主の命令に従って復讐を果たさねばならないとは。
疾風(はやて)よ、悲しいね。
************ 【注意】 以下、ネタバレあり ************
深夜の高速道路を疾走する疾風、それをぴったりとバイクで追跡する貴子。逃げる者と追う者が次第に心を通わせたかのように互いの距離を保ちながらひたすら走り続けるシーンが素晴らしかった。
転倒した貴子を待つかのようにじっと見つめる疾風。
-どうして?
-試されている?
-求めている。
-疾風は、あの人が気に入ったんでしょう。自分を怖がらずに、
好きになってくれる人のことは分かるようです。
-家族のようには打ち解けないものの、認める、というか。
自分を愛してくれた人たち、自分が信じてきた人たちと再び会うことはないだろう疾風は貴子を認めたのだろう。
そして、エピローグに涙。
お前はなぜそこまでするのか・・・。
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貴子、滝沢、疾風。この3人(あえてそう表現します)にきっちりと焦点を当てた構成が見事。
女性刑事(機動捜査隊員)とベテラン男性刑事の組み合わせに新味はないが、各々の家庭についても丁寧に描かれていたのが良かった。貴子と滝沢は互いに相手のプライベート面や家庭についても様々な推測をするが、最後まで共に真情を吐露しなかったのは、私は好ましいと思った。
変にベタベタしたところを見せなかった二人は良いコンビであった。
刑事たちも皆、リアリティあり。横山秀夫描くところの保身と組織防衛、足の引っ張り合いに汲々とするキャリア・エリートたちとは大違い。ときには絶望的な思いに捕らわれそうになりながらも、地道にひたすら歩いて聞いて探して調べる姿が印象的だった。また、典型的な男社会での偏見・皮肉などもよく描けていたと思う。
最初の「立川時限発火ベルト殺人事件」のインパクトが凄かった割には、それに至った動機などの底が浅かったのにはちょっとガッカリした。また、笠原の苦悩、疾風の訓練の様子なども、もう少し丁寧にしっかりと描けていれば90点にしたかもしれない。
参考ブログ:
♪ウサギ・絵・花・本・写真・・・♪
アトノマツリ【after_you-festa】 ~アトマツ家のミステリな読書日記